センター長挨拶

社会技術研究開発センター長
森田 朗

センター長・森田 朗現代の社会は、多くの解決困難な課題に直面しています。高齢化はいうまでもなく、少子化による人口減少はこれからのわが国の社会のあり方を大きく変えることになるでしょう。また、厳しい国家財政、不透明な国際情勢、そして予想される災害への対応など、いずれもこれまであまり経験したことのない複雑で困難な課題です。
これらの課題に取り組み解決する方法を見出すためには、人類の生み出した科学的研究の成果を動員し、課題の分析、原因の究明、そして有効な解決策の探求に努めなければなりません。そして、それを現実に社会に適用し実際に解決に取り組むことが必要です。こうした作業にいかに科学的研究の成果を活用できるか、今やそれが問われているといっても過言ではありません。
このような複雑な課題の解決には、それを構成する要素や原因の発見、発明が不可欠であることは当然です。加えて、それらを実用化するための技術、そしてそれを企業化するための資金や人材、さらにはそれを確実に実現していくための法制度や財政支援の仕組みもなくてはなりません。
こうした現実の課題解決に至る手法や技術こそ、今日では特に重要であり、それ自体科学的な研究開発の対象となりうるものであり、それを「社会技術」と呼ぶことができるでしょう。
科学技術振興機構(JST)の社会技術研究開発センター(RISTEX)は、以下のような観点から社会技術の研究開発を推進支援しています。

第1に、現実の具体的な課題の解決に資する研究であることです。研究の世界だけで完結するのではなく、その応用、実用化や企業化も射程に入れ、政策提言に連なるような研究が期待されています。
第2に、現実の社会の課題を解決するためには、自然科学系の研究だけではなく、それが人文社会科学の研究と結びつくことが必要です。異なる分野の研究者の連携と共同研究が期待されます。
第3に、研究者と実務家との連携です。それには、生まれた研究成果を適用する立場にいる実務の世界との協働が必要であり、実務家の参加と関心の共有が求められます。

このような社会技術を研究開発することの重要性を否定する人はいないと思われますが、それを積極的に促進していくことの必要性についての認識は、まだ乏しいといわなければなりません。
RISTEXでは、現実の課題解決に役立つ社会技術の開発を推進してきましたが、それとともに、これまでの13年の経験を踏まえ、今後さらにその価値と必要性を社会に広く発信していくことに努めたいと考えています。