犯罪から子どもを守るためには、犯罪を未然に防ぐことが大切です。日本の犯罪認知件数は、戦後最悪を記録した平成14年以降、減少しており、子どもの被害も減少しています。しかし、少子高齢化や科学技術の発展など、社会が大きく変わる中で、新たな犯罪や脅威も生まれています。また、国民の治安に対する不安感はあまり改善しておらず、特に子どもを持つ親の不安感はとても高い状況です。
 このようなことから、平成20年12月に国が打ち出した「犯罪に強い社会の実現のための行動計画2008-『世界一安全な国、日本』の復活を目指して-」では、国民の治安に対する不安感を解消し、犯罪を起こさせない広範な政策を総合的かつ持続的に講じていくことを掲げています。犯罪が起きてから確実に刑事司法が対応すればよいという考え方から、未然防止を国として取り組むという考え方へ、大きく転換したのです。そのため、警察などの専門機関だけでなく、防犯ボランティアをはじめ私たち国民と政府が一体となった取組みの必要性が述べられており、各所で取りくまれている犯罪対策を、予防の観点からとらえ、結び付けていくことが求められています。



 「犯罪からの子どもの安全」研究開発領域では、13のプロジェクトを進めてきました。各プロジェクトの取組みは様々な視点から分類できますが、ここではFig.1のように、「家庭や学校で支え育てる」、「地域と共に見守り育む」、「社会的な取組みに活かす」という3つに分けて紹介します。 
 異なる分類のプロジェクトであっても、取組みを詳しく見てみると、相補的であったり、関連していることがあります(Fig.2)。




 犯罪対策は、いくつかの考え方にそって分類することができますが、様々な取組みを犯罪被害の予防の観点からとらえ直す上では、病気にならないように予防する「予防医学」の考え方を当てはめたものが有用です。この考え方では、取組みの対象を一般市民、犯罪の被害者、加害者も含めて考えることができます。
 13プロジェクトの取組みがどのように予防と結び付いているのかをFig.3に示します。被害を未然に防ぐためには一次予防が大切であり、二次・三次予防の取組みを一次予防に結び付けていくことも重要です。


共通して重要な事項
科学的根拠・知見の生産
・予防に向けた取組の基盤となるデータ・知見の蓄積・分析
・取組の効果検証

* 予防の三段階の「概要」「医療」「犯罪」は、プロジェクト⑦の
    メンバーが中心となって執筆した書籍より抜粋。
    小俣 謙二・島田貴仁 編著「犯罪と市民の心理学-犯罪リスクに
    社会はどうかかわるか」北大路書房(2011)



 犯罪予防の取組みを進めていく上で欠かせないのが、基盤となるデータの蓄積や分析、取組みの効果検証です。犯罪被害の実態把握や、様々な取組みの効果検証、改善を継続的に行うことが、社会変化にも対応しながら犯罪を防ぐためには重要で、本領域では取組みを進める中でその重要性を改めて確認しました。この領域が立ち上がってから5年の間に国が打ち出した方針の中には、実証的で科学的な学校安全の取組み推進や、取調べの高度化に向けた施行や効果の検証などがあり、検討段階で本領域のプロジェクトが知見を提供してきました。また、子どもへの虐待の見逃し防止や事件・事故の防止に向けて、死因等に関するデータベース構築と調査分析の必要性を、学会や医療関係者などとプロジェクトが協働して提言を打ち出しています。
 本WEBサイトでは、本領域で研究開発に取り組んだ13のプロジェクトを紹介します。犯罪からの子どもの安全の関与者は、Fig.4に示すように幅広いため、各プロジェクトのページでは、成果を特に活用いただきたい人々を示しました(Fig.5)。