近年、地域住民の防犯活動などにより犯罪率は下がりましたが、犯罪への不安は軽減されていません。その原因は地域内の交流不足などが考えられ、特定の人に防犯活動の負担がかたよる、学校や自治会などで連携がとれていないなどの問題がみられます。そこで地域ぐるみの防犯活動とまちづくりを組み合わせた「防犯まちづくり」を進めてきましたが、まちづくりの計画段階以外に実行段階の課題も見えたほか、防犯に力を入れすぎると暮らしが窮屈になるなど、計画を見直す必要性も出てきました。
 そこで問題解決に向け、防犯まちづくりの計画、実行、評価・改善のノウハウや取組み事例をのせたWeb版の電子マニュアルと、情報共有に便利なポータルサイトを開発しました(図1)。

 電子マニュアルは、千葉県市川市、愛知県岡崎市、奈良県奈良市など10のモデル地区でまちづくりを支援しつつ、関係者から意見をもらいながら進めました。また、領域の他のプロジェクト(PJ⑧)を含めた国内外の先進地域の事例や、役立つ知識も掲載しました。
 計画についてのマニュアルでは、関係者が連携するために大切な防犯まちづくりのビジョンの設定や、内容、役割分担の検討など、取り組む際のポイントに加えて、ハード面の整備などの課題へも対応するようにしました。また、防犯以外に交通安全や防災、環境美化などとの連携も加えました。実行のマニュアルでは、子どもも参加する大切さや方法を盛りこみました(図2)。評価・改善については、地域住民へのアンケート調査方法やその結果を新たな目標に結びつける方法などを紹介しています。

 ポータルサイトは、地域内で情報共有するための地域版と、全国に防犯まちづくりの情報を提供する総合版をつくりました。地域ポータルサイトでは、地域で立てた計画や取組み状況をブログなども用いて発信しています。市川市の曽谷小学校周辺地区では、交通・防犯面で危険な場所などを示した安全マップも掲載しています。また、どの地区でもつかえるサイトのひな型もつくりました。総合ポータルサイトではマニュアルを見られるほか、防犯まちづくりを学べるWeb検定や、アンケート結果を分析するツールなども利用できます(図3)。
 平成23年には、防犯まちづくりを 推進する組織として、一般社団法人「子ども安全まちづくりパートナーズ」を立ち上げました。今後も防犯を中心にさまざまな視点も取り入れ、総合的な安全・安心なまちづくりに向けた各地の取組みを支援していきます。

代表者・グループリーダー
■山本 俊哉:明治大学理工学部 教授
■樋野 公宏:建築研究所住宅・都市グループ 主任研究員
■木下 勇:千葉大学大学院園芸学研究科 教授
■守山 正:拓殖大学政経学部 教授

主な実施者
■小栗 幸夫:千葉商科大学政策情報学部 教授 ■小畑 晴治:(財)日本開発構想研究所 部長
■狗飼 豊:(株)博報堂ソーシャルビジネス局 アカウントディレクター
■仁木 孝典:(株)情報通信総合研究所 研究員 ■重根 美香:明治大学理工学部 研究員
■石井 洋平:明治大学理工学部 研究員 ■松本 早野香:明治大学理工学部 研究員
■坂本 邦宏:イーグルバス(株) 顧問 ■橋本 成仁:岡山大学大学院環境生命科学研究科 准教授
■依田 真治:(財)都市計画協会 研究員 ■小畑 晴治:(財)日本開発構想研究所 部長
■松村 博文:北海道立総合研究機構北方建築総合研究所 科長 ■寺内 義典:国士舘大学理工学部 准教授
■吉村 輝彦:日本福祉大学国際福祉開発学部 准教授 ■佐久間 康富:大阪市立大学大学院工学研究科 助教
■三矢 勝司:NPO法人岡崎まち育てセンター・りた 事務局長 ■吉永 真理:昭和薬科大学薬学部 教授
■山田 高広:NPO法人岡崎まち育てセンター・りた 調査補助員
■天野 裕:NPO法人岡崎まち育てセンター・りた 調査補助員
■平岩 亮人:NPO法人岡崎まち育てセンター・りた 調査補助員
■瀬渡 章子:奈良女子大学生活環境学部 教授 ■小島 隆矢:早稲田大学 人間科学学術院 准教授
■渡邉 泰洋:拓殖大学政経学部 研究員 ■中迫 由実:奈良女子大学大学院人間文化研究科 研究員

協力者
■市川市役所危機管理監 ■曽谷小学校周辺地区防犯まちづくり委員会
■稲荷木小学校周辺地区防犯まちづくり委員会 ■鬼高小学校周辺地区防犯まちづくり委員会
■泉川まちづくり協議会 ■水谷東小学校区自主防災会連絡会
■「近文あい運動」子どもを守るための住民懇談会&ネットワーク会議 ■竜美丘学区自主防犯パトロール隊
■富雄地区自治連合会 ■NPO法人さかいhill-front forum  ■日光市大沢ひまわり隊 ■小金の街をよくする会
※所属・役職は、参加終了時のもの。詳しくは研究開発実施終了報告書を参照。

【論文】

■山本 俊哉(2009)小学校区における計画的な防犯まちづくりの支援方法 -市川市の曽谷小学校区におけるケーススタディ-,地域マネジメント学会平成21年度学術大会論文集.

■守山 正(2009)イギリスにおける犯罪予防戦略と地域社会の関与,警察政策11巻1号.

■守山 正(2009)現代における「子どもの安全」総合的検討,犯罪と非行第162号.

■瀬渡 章子(2009)奈良市富雄地区における「子どもの安全」地域活動─現状と課題─,犯罪と非行第162号.

■山本 俊哉(2009)小学校区における地域協働の子ども安全まちづくり─市川市における計画的な地域安全活動の実践─,犯罪と非行第162号.

■渡邉 泰洋(2009)地域安全活動の評価方法,犯罪と非行第162号.

■木下 勇(2009)子どもの移動の自由と安全の両立,都市計画Vol.58/No.6,日本都市計画学会,41-44.

■木下 勇(2009)子どもの目線からみた道路のあり方,道路,2009年11月号,(社)日本道路協会,32-35.

■樋野 公宏,吉村 輝彦(2010)地区レベルでの防犯まちづくりに関する計画づくりの意義と課題」,日本都市計画学会学術研究論文集,No.45-3.

■Drianda,Riela P(2010) “The 'Stranger Danger' Issue in Japanese Neighborhoods: Children's Perceptions,Experiences and Drawings”,Childhoods Today Vol. 4 (1).

■守山 正(2011)イギリス新政権の刑罰政策,犯罪と非行No.169.

■中迫 由実,瀬渡 章子,渡 綾子(2011)犯罪から子どもを守るための地域防犯活動に関する研究―その1 地域ボランティアに対する中学生の意識―,平成23年度 日本建築学会近畿支部研究報告集 第51号計画系,533-536.

■瀬渡 章子,中迫 由実,渡 綾子(2011)犯罪から子どもを守るための地域防犯活動に関する研究-その2 小学生時の登下校に対する中学生の評価-,平成23年度 日本建築学会近畿支部研究報告集 第51号計画系,537-540.

■木下 勇(2011)子どもの目からのまちづくり・子どもの参画,保育界,2011年9月号,日本保育協会,14-15.

■木下 勇(2011)子どもを見守る近隣づき合いが誘発される住環境,保育界,2011年10月号,日本保育協会,30-31.

■中迫 由実,瀬渡 章子,渡 綾子(2011)見守り活動を支えるボランティアの活動参加に関する意識-N市の事例-,日本建築学会技術報告集第17巻37号,1031-1036.

■木下 勇(2011)子どもにやさしいまち,月刊区画整理,4-12.

■木下 勇(2011)子どもが家の周りで遊ぶことのできる生活道路を,保育界,2011年11月号,日本保育協会,22-24.

■山内 宏太朗,渡邉 泰洋(2011)子ども犯罪被害の実態:イギリスの各種調査から,白百合女子大学研究紀要48号.

■Drianda,Riela Provi and Kinoshita,Isami(2011) Danger from Traffic to fear of Monkey’s: Children’s independent mobility in four diverse sites in Japan,Global Studies of Childhood,Vol 1(3).

■Kinoshita,Isami,Drianda,Riela Provi and Yoshinaga Mari(2011)Towards a Neighbourhood Paradise rather than Stranger Danger, Proceedings of the 50th anniversary world conference of the International Play Association,38,Cardiff,4-7.

■Drianda,Riela Provi and Kinoshita Isami(2011) Toward sustainable neighborhood: an Overview of Children's Play Spaces in the Urban Neighborhood, Proceeding of Asian Planning Schools Association Congress,Tokyo,19-21.

■木下 勇(2012)子どもと安全なコミュニティ,保育界,2012年2月号,日本保育協会,12-13.

■木下 勇(2012)子どもの環境と安全・安心,子どもの権利研究第20号,19-23.

■山本 俊哉(2012)これからの安全・安心まちづくり,住民行政の窓,No.380,2-12,日本加除出版株式会社.

■守山 正(2012)地域に根ざした刑事政策~community justiceの時代,犯罪と非行171号,6-29.

■守山 正(2012)日本の低犯罪率要因の分析,青少年問題59巻春季号,8-13.

■Isami Kinoshita(2012)Children’s Participation in Reconstruction after the Great East Japan Earthquake---Intergenerational Approach Towards Child Friendly Recovery, The 6th Child In the City Conference, Zagreb.

【メディア報道・投稿】

■2009年3月25日,産経新聞朝刊,通学路等におけて子どもを犯罪から守るための地域の安全点検と安全マップづくりの方法を紹介.

■2010年6月16日,日本経済新聞,進む“防犯まちづくりプロジェクト”.

■2011年1月8日,少年写真新聞社,子ども防犯ニュース1月号,山本 俊哉,だれが子どもの安全を守るか「地域で守る子どもの安全」.

■2011年2月8日,少年写真新聞社,子ども防犯ニュース2月号,山本 俊哉,現代は不安の時代?「地域で守る子どもの安全」.

■2011年12月22日,読売新聞論点,木下 勇,被災地のまちづくり 子供も参画.

■2011年1月号~2012年12月号,少年新聞社,子ども防犯ニュース「地域で守る子どもの安全」毎月連載,山本 俊哉:2011 年1月号「誰が子どもの安全を守るか」,同2月号「現代は不安の時代?」,同3月号「地域とのコミュニケーション」,同4月号「防犯活動から防犯まちづくりへ」,同5月号「計画的な防犯まちづくり」,同6月号「安全マップをもとに通学環境を改善」,同7月号「小学校区の関連団体が集まる」,同8月号「関連団体の情報をつかんで整理」,同9月号「何を計画としてまとめるか」,同10月号「どの団体が何を実施するか」,同11月号「Webサイトを通して情報を共有」,同12月号「地域の防犯活動による犯罪減少」,平成24年1月号「津波被災地の子どもたちの安全」,同2月号「屋外遊具の点検」,同3月号「よく見て触って安全点検」,同4月号「保護者による屋外遊具の安全点検」,同5月号「保護者による公園の安全点検」,同6月号「子どもの指摘箇所を点検・改善」,同7月号「防犯カメラの使用目的と効果」,同8月号「通学路の交通規制の住民合意」,同9月号「国際セーフスクールの認証」,同10月号「セーフコミュニティの認証」,同11月号「地域に学び安全策を用意する」,同12月号「子ども安全まちづくりの推進」.

【受賞】

■2010年3月1日,第16回マイタウンマップ・コンクール 実行委員会奨励賞,明治大学理工学部山本俊哉研究室「市川市曽谷小学校周辺地区子ども安全ホームページ」マイタウンマ ップ・コンクール実行委員会+(財)コンピュータ教育開発センター(CEC).

■2010年11月18日,平成22年度文部科学大臣表彰学校安全ボランティア活動奨励賞,富雄 地区の子ども安全対策協議会(代表 安達 孝雄),文部科学省.

■2012年6月15日,第1回まちづくり法人国土交通大臣表彰「まちづくりの担い手サポート  部門」国土交通大臣賞,特定非営利活動法人岡崎まち育てセンター・りた,国土交通省.

【その他】

■2010年,山本 俊哉,まちづくりを通した安全・安心の向上「まちづくりを考える -地域再生の見取り図」,有斐閣.

■2010年,こども環境学会,木下 勇編著,子どもの遊びと安全・安心が両立するコミュニティづくり,萌文社,1−86.

■2011年,守山 正,イギリス犯罪学研究,成文堂.

■2011年9月,報告 我が国の子どもの成育環境の改善にむけて-「成育空間の課題と提言(2008)」の検証と新たな提案,日本学術会議心理学・教育学委員会・臨床医学委員会・健康・生活科学委員会・環境学委員会・土木工学・建築学委員会合同子どもの成育環境分科会,1-50(木下 勇が小委員会委員長として草案や資料作成を担い、その中で安全面から道路の改善や強い近隣関係をつくる住環境づくりの提案を行なっている).