人と情報のエコシステム 研究開発領域の設定について

平成28年度戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)における新規研究開発領域の設定及び領域総括の選定について

平成28年度発足の新規研究開発領域については、平成27年度に社会技術研究開発センター俯瞰戦略ユニットに新領域設計チームを立ち上げ、有識者へのインタビューや事業の具体化に向けた検討を行ってきました。平成28年2月17日には、第13回社会技術フォーラム~新領域に関する社会との対話「人と情報のエコシステム 情報技術が浸透する超スマート社会の倫理や制度を考える」を開催し、領域設定に向け一般の方々と意見交換を行いました。


これらの検討に基づき、文部科学省からJSTに対して、「戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)における新規研究開発の方針について」(平成28年4月11日 文部科学省 通知)が示されました。 JSTでは、本通知を受けて社会技術研究開発主監会議(平成28年4月12日)及び理事会(平成28年4月25日)の審議を経て、下記の通り新規研究開発領域を設定し、領域の運営責任者である領域総括を選定しました。

●研究開発領域の名称:
「人と情報のエコシステム」
●領域総括:
國領 二郎(慶應義塾大学 教授)

1.研究開発領域の内容

(1)研究開発領域の目標
   本領域における具体的な目標は以下の通りです。

  • 情報技術と人間のなじみがとれている社会を目指すために、情報技術がもたらすメリットと負のリスクを特定し、技術や制度へ反映していく相互作用の形成を行う。具体的には、
    • ①情報技術がもたらしうる変化(正負両面)を把握・予見し、アジェンダ化することで、変化への対応方策を創出する。
    • ②情報技術の進展や各種施策に対し、価値意識や倫理観、また現状の制度について検討し、
      望まれる方向性や要請の多様な選択肢を示していく。

①②のような、問題の抽出、多様なステークホルダーによる規範や価値の検討、それに基づく提示や提言までをサイクルとみなし、その確立のための研究開発を行います。また、このような社会と技術の望ましい共進化を促す場や仕組みを共創的なプラットフォームとして構築することを目指し、その機能のために必要な技術や要素も研究開発の対象とします。

(2)研究開発領域の設置期間

  • 設置期間は、平成28年度から平成33年度の延べ6年間を想定
  • 初年度、2年度目、3年度目に、数件の新規研究開発プロジェクトの採択を想定

(3)研究開発の種別・規模

本領域では、領域目標の達成に共に取り組む研究開発の実施者を広く募り、研究開発プロジェクト及びプロジェクト企画調査(以下、研究開発プロジェクト等)を実施します。各年度数件の新規の研究開発プロジェクト等の採択を想定しています。

  • ① 研究開発プロジェクト
     本領域の目標達成に向けて、(4)に示す研究開発テーマに該当し、研究開発対象へ取り組みを提示するもの。それらが有効であることを実証しようとする取り組みが求められる。
    ◇予算規模(直接経費):1プロジェクト 数百万円から10百万円程度(上限目安 20百万円)/年(12ヶ月)
     研究開発プロジェクトの内容及び採択方針に応じて、柔軟に取り扱う。
    ◇プロジェクトの期間:当初は、原則として3年以下
     なお、3年度目に評価を行い、実装段階にあるプロジェクトや自律的実装の可能性の高いプロジェクトを最大1年間延長する場合がある。また、研究開発の進捗等に応じて適宜、適正化を図るとともに、体制の構築が進まない等、目標達成の可能性が低いと判断された場合は期間途中で終了する場合がある。
  • ② プロジェクト企画調査
    優れた構想ではあるものの、有効な提案とするには更なる検討が必要なものについて、今年度は企画調査としての提案を募集する。また、研究開発プロジェクトとしての提案をプロジェクト企画調査として採択する場合がある。
    ◇予算規模(直接経費):1課題 3百万円以下
    ◇企画調査の期間:半年以内(平成28年度は約5ヶ月間)
    なお、「プロジェクト企画調査」として採択された場合は、次年度に再度、研究開発プロジェクトの提案として応募することが期待される。

(4)研究開発テーマの概要

 領域の目標を達成するために、下記A~B-5の研究開発テーマの公募による研究開発プログラムを推進します。「A.共進化プラットフォーム」は、領域全体が目指すアウトプットそのものですが、仕組みの構築や方法論自体も研究開発の対象とします。また、B-1~B-5の応用テーマへの取り組みの際にも、「A. 共進化プラットフォーム」の構築に貢献することが期待されます。

A:共進化プラットフォーム
情報技術がもたらしうる潜在的なリスクやメリットを的確に特定し、評価を行うための方法論の研究開発。評価を情報技術の人間中心設計に反映させる方法論の研究開発。

B-1:法律・制度
情報技術がもたらしうる潜在的な負のリスクを軽減し、潜在的なベネフィットを最大化するための、法的課題の特定と措置の提言を行う研究開発。

B-2:倫理・哲学
情報技術がもたらしうる潜在的な倫理的・哲学的課題の特定と指針を提示する研究開発。

B-3:経済・雇用
情報技術がもたらしうる潜在的な負のリスクを低減しながら、ベネフィットを最大化するための研究開発。

B-4:教育
情報技術が浸透する社会における変化への対応力を身につけるための研究開発。

B-5:人間中心視点による技術開発
開発の上流段階から社会的要請を意識し、多様なステークホルダーとの対話を通じた人間中心の技術開発の実証研究。他の競争的な研究資金などとの連携によって、具体的な技術開発の中で人間中心の考え方を取り込んだ際の課題や対応策について研究を行う。

2.領域総括について

國領二郎氏は、民間企業を経て、長年に渡り第一線で経営情報システム分野における研究に従事してきた。平成5年からは慶應義塾大学大学院経営管理研究科、平成15年からは慶應義塾大学環境情報学部、平成18年からは同大学総合政策学部にて教鞭をとり、研究、教育、人材育成に尽力している。研究活動にとどまらず、研究成果に基づいて情報技術を使ったイノベーション論を展開し、様々な企業のアドバイザーや社外取締役として活躍するなど、社会に向けた発信・応答を精力的に展開している。平成17年には、住民参画型の新たな地域情報化のあり方についてのビジョン策定に対して、総理大臣賞を受賞している。また学会や公益社団法人などの活動を通じて、産官学民の垣根を越えた実践的な社会貢献活動や議論の場の形成、ネットワーク構築に積極的に取り組んでいる。

「人と情報のエコシステム」研究開発領域では、ビッグデータ型人工知能、ロボット、IoTなどの情報技術の進展がもたらす問題に適切に対処していくために、情報技術がもたらすメリットと負のリスクを特定し、技術や制度へ反映していく相互作用の形成を行うための研究開発を推進する。この実現に向けて、本領域が取り組む問題に対する広い視野と先見性とともに、多岐にわたる分野の専門家、実務家、関与者の連携・協働を促し、バランスの取れた領域運営が必要となる。

國領氏は、上述の通り、情報技術や技術経営に関する高い専門性と、グローバル・スタンダード、プライバシーやプラットフォームといった技術と社会・制度のあり方を重視した豊富な社会活動をバックグラウンドとして、本領域と密接に関わる分野において多大な実績を有している。また、各関係省庁における委員会座長や委員を歴任しており、国内外の政策動向にも精通している。さらに、平成21年には慶應義塾大学総合政策学部長、平成25年には慶應義塾常任理事に就任し、領域目標の達成に向けた効果的・効率的な研究開発の推進と適切なマネジメントを行うに十分な経験を有している。本領域は、多様な学術コミュニティ及びステークホルダーのネットワークとの連携・協働が必要となる。その点においても、社会における問題解決と実践を強く意識したこれまでの多面的な活動や、日本国内にとどまらず国際社会における活動経験・知見を本領域でも発揮していただけるものと考える。

以上のことから、國領氏が領域総括として適任であると判断する。

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