持続可能な多世代共創社会のデザイン 研究開発領域の設定について

平成26年度戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)における新規研究開発領域の設定及び領域総括の選定について

 平成26年度発足の新規研究開発領域については、平成24年度に行った社会問題の俯瞰調査の結果等に基づいて、「持続可能な多世代共創社会のデザイン」として設計を進めることとし、有識者へのインタビューや事業の具体化に向けた検討を行ってまいりました。平成26年4月25日には、設定に向けた幅広い一般の方々との意見交換の場として、公開フォーラムを開催いたしました。
  これらの検討に基づき、文部科学省よりJSTに対して、「戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)における新規研究開発の方針について」(平成26年4月21日 文部科学省 通知)が示されました。
  JSTでは、本通知を受けて社会技術研究開発主監会議(平成26年5月12日)を開催し、その審議を経て、下記の通り新規研究開発領域を設定し、領域の運営責任者である領域総括を選定しました。

●研究開発領域の名称:
  「持続可能な多世代共創社会のデザイン」
●領域総括:
  植田 和弘(京都大学大学院 経済学研究科 教授)

1.研究開発領域の内容

(1)研究開発領域の目標

  • <1> 人口減少、少子高齢化、財政縮小等の課題を抱えつつある都市地域を、環境、社会、経済の各側面から持続可能とするため、これまで有効に活用されてこなかった地域の多様な資源や新技術・適用可能な技術を活用し、環境と調和しながら、子供から高齢者まで年齢、国籍、性別、障害の有無によらず多世代・多様な人々が、就労や社会参画等を通じて地域とのつながりを得て包摂され、創造性を発揮して活躍することができる社会をデザインする。
  • <2> <1>で掲げた社会をデザインすることを目指し、環境、社会、経済の多面的な価値創出を目指して包括的なアプローチによる市民視点の実践的な研究開発を実施し、都市地域への研究開発成果の実装につながる、科学的根拠に基づいた持続可能となるための新たな仕組みを創出する。
    その際、研究開発そのものが多世代・多様な人々との共創の取組となるとともに、地域の特性を生かした新たな産業・事業やサービスの創出につなげるために、研究開発段階から社会の関与者たる多様な関係機関(特に地方公共団体)を構成メンバーとする研究開発チームを編成し、成果の利用者たる地域住民からのフィードバックを行う具体的な仕組みを組み込むなどの連携体制を構築する。
  • <3> <1>、<2>により得られた個別の成果が、国内外の他地域で活用されるよう、一般化、体系化を図るとともに、当初から個々の研究開発プロジェクト間の連携を図り、最終的に複数の成果を統合し地域に実装する取組につなげる。またその担い手となる関与者が、継続して協働・共創するためのネットワークを構築する。

(2)研究開発領域の設置期間

  • 設置期間は、平成26年度から平成31年度の延べ6年間を想定(3年度にわたる新規採択を想定)

(3)研究開発プロジェクトの種別・規模

  • <1> 研究開発プロジェクト

     社会問題を解決するための選択肢を提示するもの(研究開発のあり方、システム・デザイン手法、新たな社会経済システム、持続可能性や社会問題解決に係る指標等の体系化、国の政策への提言など)から、社会の問題の解決に資する具体的な技術や手法等についてその実証まで行おうとするものまでを含む。
    ◇予算規模:1課題 数百万円から30百万円未満/年
    ※各研究開発課題の内容および採択方針に応じて、柔軟に取り扱う。また、研究開発課題の進捗等に応じて適宜、適正化を図る。
    ◇プロジェクトの期間:当初は、原則として3年とする。
    ※3年度目に評価を行い、実装段階にある課題や自律的実装の可能性の高い課題を最大2年間延長する場合がある。
    また、体制の構築が進まないなど目標達成の可能性が低いと判断された場合は期間途中で終了する場合がある。
  • <2> プロジェクト企画調査

     研究開発プロジェクトとしての提案のうち、構想として優れてはいるものの実施するためにはさらなる具体化が必要なものについては、半年間の企画調査として採択することを検討する(企画調査としての募集は行わない)。

(4)公募する研究開発プロジェクトの要件

(4)-1.研究開発プロジェクトの要素イメージ

  本領域における研究開発プロジェクトの重点的に取組むべきカテゴリーと要素イメージは以下のものを想定。研究開発プロジェクトにおいては、領域目標に沿った研究開発であるとともに、研究としての仮説検証にとどまらず、地域・行政からのニーズや実装に向けた課題を踏まえた上で、実施内容や体制を構築することが求められる。また、新たなビジネスや新たな経済社会の仕組みの創造の視点など地域が自立し持続可能となるための仕組みの創出が期待される。
  さらに、個別のカテゴリーや要素にとどまらず、むしろ複数(2つ以上)をつなぐものや新しいアイデアを加えてシステムとしてデザインすることで多様な課題の解決や新たな価値の創出につながるものを推奨する。また、都市地域としては、特定の地域のみならず、複数の地域の連携や海外との連携、都市と農村の共存関係をふまえたもの、物理的な空間によらないバーチャルな地域・コミュニティといったものも対象とする。
  他方、以下のカテゴリーや要素イメージにとらわれない領域目標の達成に貢献し成果の汎用性の高い提案も歓迎する。

  1. 人が孤立化せず出かけたくなる空間の拡大
  2. 多世代・多様な人々の能力を生かした就労・社会参画の促進
  3. 人・地域・環境の相互作用を生み出すライフスタイル・行動変容の促進
  4. 有効活用されていない地域資源の発掘と活用
  5. 環境と調和した地域の資源・経済の循環
  6. 公的サービスの質を落とさず低コスト化、効率化、リデザイン

(4)-2.研究開発推進体制について

  • <1> 自然科学と人文・社会科学の双方にまたがる分野横断的な知見を活用し、ハード・ソフト両面からの包括的、総合的な研究開発を推進すること。その際、必要に応じて各省庁、自治体、民間等のハード整備を中心としたプロジェクトや環境未来都市、環境モデル都市、特区等、既存施策との連携も検討すること。
  • <2> 研究開発の終了後も発展的な取り組みが継続的に行われるために、研究開発の段階から研究開発推進者と地域のステークホルダー(行政、住民、学校、産業、NPO/NGO等)が常に対話・共創し、共感と信頼のオープン・イノベーションのプラットフォームとして機能する人的・資金的に持続可能な体制を構築すること。また、外部とのネットワークの構築やアウトリーチを行うとともに、このプラットフォームが他地域にも展開可能性を有するように汎用的な要素技術や方法論等が構築されることが期待される。
  • <3> 研究開発当初から地域の住民等との共創を行うことや成果の利用者となる住民等からのフィードバックを行う仕組みを設けること。
  • <4> 研究開発を実施するにあたり、地方自治体の参画について十分考慮すること。
  • <5> 本領域の掲げる課題は国内のみにとどまらず現在、将来的に海外も同様な課題があることから、海外の知見、フィールド、人的資源等の活用など海外との協同活動を対象とした提案も積極的に推奨する。

2.領域総括について

 植田氏は、環境経済学の視点から、環境の制約と社会発展を両立する持続可能な社会の在り方の研究に従事され、経済発展に伴う廃棄物等の環境問題に対する政策の研究や、近年では東アジアの発展にともなう環境問題、国内および国際的なコモンズの管理問題、低炭素社会の実現に向けた環境経済や政策の研究に取り組まれてきた。特に、都市・地域におけるサステイナブルな循環型社会の在り方についても、早くから着目し研究に努められている。また、2012年から2年間京都大学大学院経済学研究科長として経済学分野における教育・研究の人材育成にも尽力されている。
 東日本大震災以降は、東日本大震災復興構想会議検討部会の専門委員を務められるとともに、震災復興と日本のこれからのエネルギー政策について各地で講演されるなど精力的な活動を行われている。これらの活動に加え、環境経済・政策学会会長、再生可能エネルギー固定価格買い取り制度調達価格等算定委員会委員長等を務められ、経済発展にともなう社会問題の解決に対し、科学技術・環境・経済の要素を組み合わせることにより貢献されてきた。
 こうした功績が認められ、1992年に国際公共経済学会賞表彰、2006年に環境科学会学術賞表彰、2011年に日本計画行政学会論説賞表彰を受賞されている。
 植田氏は、上述の通り、本領域と密接に関わる分野において多大な実績を上げてこられた。また、京都を中心に地域の環境問題に取り組む認定NPO法人等の活動を通じ、企業や地方自治体との協働の実績もあり、本領域運営に求められる十分な経験を有している。
 以上のことから、植田氏が領域総括として最も適任であると判断する。

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