H24

H25

H26

H26年度 採択課題 研究機関:平成26年10月~平成29年9月 カテゴリー1 災害マネジメントに活かす島しょのコミュニティレジリエンスの知の創出 研究代表者 岡村 純(日本赤十字九州国際看護大学  看護学部 教授)

概要

2005年福岡県西方沖地震で被災した玄界島は、甚大な被害にもかかわらず、住民が協力して2次災害防止と迅速な全島避難のために行動し、発災3週後には住民主体の復興計画を策定して、3年で帰島に至った。この復興過程は、厳しい自然環境のなかで漁業をともにしてきた住民同士のつながりと歴史文化が寄与している優れた災害復興事例と考えられる。

本プロジェクトは、玄界島住民の復興経験・復興過程を多角的に分析し、災害マネジメントに活かすことのできるコミュニティレジリエンスの知として抽出し、この知を宗像市地島において住民とともに活用・検証することで、より多くの島しょに応用可能なコミュニティレジリエンスの知を創出することを目的とする。

本研究ではコミュニティレジリエンスの知を、コミュニティが歴史文化として創り上げ、柔軟に変化させてきた暗黙の社会的ルールと暫定的に定義する。この知を他の島しょを始め各所で活用できるようにすることで、災害に強いコミュニティを育成することが可能となる。

目標

玄界島におけるコミュニティレジリエンスの形式知を抽出する
 ①玄界島の地区踏査、②玄界島住民のインタビューの質的探索的分析、③玄界島復興計画記録の探索的分析、を統合し、玄界島のコミュニティレジリエンスの形式知を抽出する。

地島、大島におけるコミュニティレジリエンスの形式知を創出する
 ①地島の地区踏査・健康調査、②地島の防災・復興計画の分析を踏まえ、玄界島のコミュニティレジリエンスの形式知からアクションリサーチによって、地島の形式知を創出する。
 ①大島の地区踏査・健康調査、②大島の防災・復興計画の分析を踏まえ、地島のコミュニティレジリエンスの形式知からアクションリサーチによって、大島の形式知を創出する。

玄界島、地島、大島に共通するコミュニティレジリエンスの形式知を創出する

関与する組織・団体

  • 日本赤十字九州国際看護大学
  • 福岡教育大学
  • 佐賀大学
  • 宗像市(健康づくり課、生活安全課、元気な島づくり課、大島診療所担当)
  • 玄界島コミュニティ(地区長、漁協組合長)
  • 大島コミュニティ(漁協組合長、コミュニティ運営協議会)
  • 地島コミュニティ
  • 一般社団法人地域社会継続研究所

「コミュニティ」紹介

玄界島は、2005年の福岡県西方沖地震で甚大な被害にもかかわらず、①住民による要援護者の迅速な避難、②2次災害防止行動、③発災から3週間後に、官民協力体制の下での復興計画策定、ができたコミュニティである。
自助・共助が有効に機能した玄界島の背景には、島しょでの生活・健康を基盤とした知の蓄積(=コミュニティレジリエンスの知)があると考えられる。

アプローチ

本研究開発は、地島・大島住民と研究者が災害に強い安心で安全なコミュニティづくりという目標を共有し、研究活動そのものが未来構想的な実践を意図しているため、地区踏査・健康調査・住民インタビュー・質問紙調査などを通じたアクションリサーチを行う。そして、玄界島におけるコミュニティレジリエンスの形式知を地島・大島での適用を試みることで、平時から災害に強い安心で安全なコミュニティづくりを目指す。

※アクションリサーチ:
目標とする社会的状態の実現へ向けた変化を志向する、目標を共有する研究参加者(住民)と研究者による共同実践的な研究。

課題

  (H27年6月現在)

平成26年度は、島しょの災害に関する先行研究の文献的検討と玄界島における予備的インタビューと防災訓練の参与観察から、玄界島の復興過程を記述し、「玄界島のコミュニティレジリエンスの暗黙知」に関する作業仮説を確定できた。玄界島は被災前に形成されていたコミュニティレジリエンスの暗黙知によって、新しいコミュニティが(再生ではなく)創造できたという仮説である。被災前のコミュニティレジリエンスの暗黙知としては①漁協という近代的な組織による漁業の運営、②島特有の居住環境による濃厚な近隣関係の維持、③女性組織による島内の安全維持、④以上によって形成された島民のコミュニティアイデンティティを仮説としている。
さらに、今後のコミュニティレジリエンスに影響する要因として、①迅速な全島避難と人的被害の少なさ、3年で全員帰島という成功体験と誇り、②近隣関係のネットワーク化、③共有空間への「生活の滲み出し」の少なさ、仮説している。 今後は玄界島での地区踏査や島民へのインタビューを継続し、以上の仮説を検証するとともに、宗像市地島・大島に検証した仮説を適用することによってその有効性を検討する。

アピールしたいこと

 

 本研究は、グッドプラクティスとされる福岡市玄界島の復興過程をコミュニティ形成の立場に立って解明し、コミュニティレジリエンスの暗黙知を抽出し、形式知として言語化する。
 この形式知の有用性を福岡県宗像市地島、大島で検証することによって、島しょにおけるコミュニティレジリエンスの形式知として確立する。
 島しょという、被災時に孤立する環境におけるコミュニティレジリエンスの形式知は、半島地域や過疎地域、限界集落などに応用可能であると考えている。
 さらには、超高齢社会となり、人と人とのつながりが希薄になると予測される地域社会において、本プロジェクトの成果はコミュニティを復活・再生させる形式知として活かすことができるかも知れないと考えている。
 本研究は、災害看護の研究者が地域計画、社会教育の専門家と共同することによって、コミュニティレジリエンスという新しい概念に挑戦するものである。

メッセージ

福岡県西方沖地震から早10年が経過し、最大の被災地福岡市玄界島も災害サイクルの災害準備期(将来の災害に備える時期)に入っていると考えられます。
 しかし、災害復興の「グッドプラクティス」(優良事例)と称賛される玄界島の避難・復興経験は、福岡県内はもとより、全国の島しょの人々にも共有されていないのが現実です。
 そこで、玄界島の人々に現在までの復興の道のりを振り返ってもらうことによって、コミュニティレジリエンスの知(コミュニティが災害から復興し、再生していく知恵)を見つけ出し、自然・社会的条件の似ている福岡県宗像市地島・大島の人々とともに考えることで、全国の島しょにおけるコミュニティレジリエンスの知恵を防災・減災計画や復興(予定)計画に活かし、創っていきましょう。

リンク

H26年度 採択課題 研究機関:平成26年10月~平成29年9月 カテゴリー1 都市部コミュニティを含めた自助による防災力と復興力を高めるためのLODE手法の開発 研究代表者 倉原 宗孝(岩手県立大学 総合政策学部 教授)

概要

南海トラフ地震などによる大災害時においては大きな被害が予想されるなか、都市部をはじめとして、地域コミュニティに対する継続的で十分な量の情報提供の有効性が明らかになった。一方で、地域コミュニティが希薄な地区では要援護者や要配慮者、あるいはその方々を支援できるリソースを見つけ出すのが困難であり、地域防災活動に大きな課題を抱えている。コミュニケーションを通じてそれらを解決するための方法論は確立されているとは言えず、そのようなコミュニティづくりのツールも存在しない状況といえる。

本プロジェクトは、「要援護者の災害時救援と平時の見守り」という防災・福祉両面からの視点を通して、現場住民や福祉関係者などの防災意識醸成と連携体制づくりを促進するためのツールとして利用する、住民主体・参加型手法『LODE(Little,Old, Disabled people's Evacuation)』の普及モデルを開発することを目的とする。具体的には、複数のモデルコミュニティにおいて住民組織や地区社協などの普及の担い手となる関連団体と協働しながら、手法の体系化を実施し、実効性が高くかつ広く普及力のある標準的な手法の開発を目指す。

目標

 本プロジェクトは、自助からの防災力・復興力を高めるための住民主体・参加型手法『LODE』の普及モデルを開発することを目的とする。
 LODEは、様々なタイプのコミュニティの現場において、「要援護者の災害時援助と、平時の見守り」という防災・福祉両面の視点から、住民や福祉関係者等の防災意識醸成と、連携体制づくりを促進するためのツールである。
 研究開発にあたっては、実効性と普及力のある標準的手法とするために、複数のモデルコミュニティにおいて住民組織や地区社協等の普及の担い手候補等と協働しながら、手法の試行調査や分析、体系化等の検討を行う。

関与する組織・団体

  • 岩手県立大学 総合政策学部倉原研究室
  • 特定非営利活動法人災害ボランティアネットワーク鈴鹿
  • 生きる力を育む研究会
  • みんなが龍馬塾
  • 盛岡市 市長公室 企画調整課
  • 一般社団法人 SAVE IWATE
  • 伊丹市社会福祉協議会

「コミュニティ」紹介

地域コミュニティが希薄な地区では、住民相互の助け合いが期待しづらく、大災害発生時はもちろん、平時においても「要援護者(とりわけ高齢者)の見守り・福祉」という問題を抱えていることが多い。

こうした問題に主体的に向き合っていく地域住民主体を支援するために考案されたのが『要援護者の発見・認知・支援とそのためのコミュニティ強化に重点を置き、戸建て住宅地区だけでなく中高層住宅地区でも取組むことができる防災・福祉ワークショップ:LODE(ロード)』である。

中高層住宅が多い地区でも取組みが可能であり、地域の要援護者を見守っていく住民意識を醸成しながら、社協等の地域密着型社会システムの活用を考えていく手法を開発する。

アプローチ

本プロジェクトでは、次のように「モデル手法の設定」+「地域での試行調査と分析によるモデル手法の修正検討」というスタイルによって研究開発を進める。
①LODE各モデル手法の仮設定
1、コミュニティタイプ別実施手法
2、LODE実施・普及人材の育成方法
3、各タイプ別実施方法を含めたLODE手法の体系化
4、自助・互助力の向上を測るための、或いは自助・互助力の向上に有効と思われる指標等
5、個人情報の収集と管理方法に関する調査方法
②モデル手法の第1次試行調査・分析、及び手法の修正検討
③モデル手法の第2次試行調査・分析、及び手法の修正検討

課題

  (H27年6月現在)

一次試行調査として異なる特徴を持つ8地区でLODEとしてのワークショップを実施した。その経験からLODEワークショップとして有効なコンテンツを構築してきている(思いや情報の提供、創作活動、図上作業、等)。その中で地域のコーディネーターやワークショップ実践者としての人材も発掘・育成されてきている。今年度はこうした地区からの持続的活動と共に新たに対象を広げながらさらに内容を充実させていく。また平行して被災地や防災・福祉関係者へのヒヤリング等を通じて、福祉、防災、個人情報などに関する情報を収集、分析してきた。さらにLODEとして難しくもあり重要なのが、特にD(障がい者)の分野であると考えられる。これらの視点も含め各情報収集・実践活動からLODEの体系化に向かう。

アピールしたいこと

 

【独自性】
・防災と平時の要援護者見守りを兼ねる取り組み
・「要援護者に関する学習」による住民の福祉理解力強化
・社協など"やや形骸化していた社会システム"を普及の担い手として活用
・人体の免疫システムとの対比・対照を意識した手法の体系化
【新規性】
・より脆弱性を顕在化させる「今LODE」と「5年後LODE」
・立面図方式の中高層住宅図上災害訓練ワークショップ
【得意な手法】
・女性等を惹き付ける導入ワークショップの活用(楽しさ・親しみやすさや感動体験を普及力に生かす)⇒仮称「赤福餅型手法("魅力的な導入"と"防災学習"が一体となった手法) ・LODE百人物語などの個人観察、キーパーソンづくりの観察調査

メッセージ

いつ、どこで発生するか分からない大災害に備えることは、いま緊急課題ですが、同時にそれは、人とコミュニティの力を磨く優れた機会でもあると考えています。

災害という非常事態、それは一人ひとりの暮らしや生き方、まわりの人々や環境に対する思いや関わり、これらにあらためて目を向けることに繋がります。それは豊かな地域社会創造に向けた扉の一つとなるはずです。

本プロジェクトでは、そのことへ弱者の視点から見つめ動くことを促す手法と経験を体系化したいと思います。

LODEを「弱者の視点からすべての人・環境に優しい豊かな社会づくりを目指す手法」へと高められるよう尽力する所存です。

リンク

H26年度 採択課題 研究機関:平成26年10月~平成29年9月 カテゴリー1 災害時動物マネジメント体制の確立による人と動物が共存できる地域の創造 研究代表者 羽山 伸一(日本獣医生命科学大学 獣医学部 教授)

概要

日本では、災害時における動物の救助や医療の体制や研究が未発達なため、先の東日本大震災においても、被災動物との同行避難が困難となった結果、野生化や過剰繁殖といった事態も発生し、人間にとっても公衆衛生や精神衛生面における悪化等が深刻化した。災害時の動物医療体制を整備することは、動物の健康や福祉向上効果だけでなく、人の安全確保と環境保全を担う大きな役割がある。

本プロジェクトは、災害時の動物医療体制の確立を目指す我が国初の試みであり、東日本大震災での被災地域の経験や対策先進地域である米国での現地調査結果をふまえ、首都直下型地震を想定した「災害時に派遣する動物医療支援チームの育成と組織化」および「動物シェルターにおける適正飼育の推進」を実現させる。

目標

 

 平常時からの集団的動物適正飼育
 地域に必要なシステム
   -人の安全のため
   -地域の安全のため
   -動物の安全のため
 災害時の動物救護体制の整備
 災害時に出動する動物医療支援チームの組織化と人材育成

関与する組織・団体

  • 日本獣医生命科学大学
  • University of California, Davis
  • 日本医科大学
  • 日本獣医師会
  • 地方獣医師会
  • 動物救護本部
  • 自治体動物管理センター /保健所

「コミュニティ」紹介

災害時動物マネジメントを実証知見の基に構築するコミュニティ

・動物医療従事者、研究と教育の中心となる大学、実動を担う獣医師会、その活動を連携して協力する動物関連NGO、動物関連企業(ペットフード、動物医療企業など)、動物行政

・動物の健康に留意することが人の健康向上につながり、動物に対するマネジメント体制が人や地域の安全を向上する目的のため、各関連部署の役割を明確にし、災害時の適切な対応、そして事前の防災対策を講じ、このコミュニティを通して人と動物の両方が安心して暮らせる地域を目指す。

アプローチ

災害動物医療を裏付ける実証知見
-動物に関わる人の健康被害(被災地)
-地域での人と動物の関係性調査(非被災地と被災地)
備え
-災害シェルターでの動物管理調査
-平常時シェルターでの動物管理調査
-人と動物の関係に基づく地域に必要な動物マネジメントの検証
応答
-カリフォルニア大学Veterinary Emergency Response Teamとの連携
-国内動物救護活動の事例分析および実態調査
-日本に必要な災害動物医療支援チームの教育プログラムの開発
-災害動物医療支援チームの組織化と人材育成

到達点と課題

  (H27年6月現在)

本プロジェクトの到達点は、家庭動物および産業動物と人間の関わりについてのフレームワークを提示し、それを担える人材育成を行うことによって、災害発生時から復興に至るあらゆる場面で地域の安全と健康を確保できる社会の構築である。
しかし、現状では災害時における動物マネジメントの実態を示すエビデンスが不足し、また関連する法制度や体制が未整備である。

アピールしたいこと

 

 本プロジェクトでは、動物のためだけではなく人の生命や地域の安全を守るための災害時動物マネジメントを目指しており、この点は従来にはなかった発想である。また、わが国では災害時における動物マネジメントに関わる科学的な調査や必要な人材育成がこれまではほとんど実施されてこなかったため、本プロジェクトでは災害獣医学の先進専門機関であるUCD(カリフォルニア大学デービス校)と連携し、世界最先端のシステムを学びつつ、日本独自の仕組みや人材育成方法を明らかにする。

メッセージ

これまでわが国の災害対策では、動物に関わる問題解決をほとんど重視してきませんでした。しかし、イヌやネコなどの家庭動物は今や家族同然に扱われ、また産業動物も農家にとってかけがえのない存在で、その救助は動物を救うだけではなく、飼い主の生命や生活を守ることにつながります。このプロジェクトでは、人と動物が共存できる社会とは何かを明らかにし、その社会を実現するための仕組みや人材育成に取り組みます。

リンク

H26年度 採択課題 研究機関:平成26年10月~平成29年9月 カテゴリー1 災害救援者のピアサポートコミュニティの構築 研究代表者 松井 豊(筑波大学大学院 人間総合科学研究科(人間系) 教授)

概要

自然災害などの際に職業的に被災者を支援する災害救援者が被る惨事ストレスに対する社会的認識は高まっている。しかし、多くの災害救援者のストレスケアは自治体単位、施設単位での実施に留まっており、より組織だったケアシステムが必要である。

本プロジェクトでは、各種の災害救援者(消防職員、看護職員、小中学校教師、保育士、障害者施設・高齢者施設などの介護施設職員、一般公務員)の惨事ストレスケアを可能とするピアサポートコミュニティ(ネットワーク)の構築を目的とする。

具体的には、消防・看護職員に関しては、ネットワークの構築と、研修と効果測定を行う。他の職種に関しては、震災時の職員に対するストレス対策の実態調査や意識調査を実施し、コミュニティ構築を試みる。

目標

本プロジェクトでは、被災した職員とピア(同職種で惨事ストレスケアの訓練を受けた他地域の職員)をつないで、ピアサポートという支援の手をつなぐことを目指します。支援の具体的な内容は、惨事ストレスや悲嘆にたいする個別傾聴や電話による個別支援(リモートサポート)などを、その職種にあった支援の仕方を探りながら、展開します。

本プロジェクトでは、広域災害時における各種の災害救援者(消防職員、看護職員、一般公務員、保育士・幼稚園教諭など(以下「保育士」と表記)、小中学校教師、障害者施設・高齢者施設等の介護施設職員)の惨事ストレスケアを目的とした、ピアサポートコミュニティ(ネットワーク)の構築とそのノウハウの構造化を目標とします。

本プロジェクトの具体的な活動と目標は、職種によって異なります。 消防職員・看護職員では:

ネットワークを呼びかけ、ピサポートの研修を行います。研修では、惨事ストレスやピアサポートに関する学習、傾聴技術やピアサポートの実習などを行い、効果測定を行います。効果測定のための測定ツールも開発中です。研修後は、ネットワーク(コミュニティ)を構築し、そのノウハウを体系化します。  写真は、消防研修の様子です。

他職種では:
 東日本大震災における職員のストレスケアの実態を、被災地職員への面接調査や質問紙調査で把握し、効果的なケアシステムを試作します。また、システム構築のために、行為記載賀に見舞われて職員のストレスケアを行った海外の組織に対するフィールド調査も行います。

本研究の背景には、東日本大震災における災害救援者の惨事ストレスの実態があります。表には東日本大震災において様々な災害救援者が、どの程度惨事ストレスを残したかという調査結果を示します。外傷性ストレス症状を測定するIESRという尺度のハイリスク率を表記しました。消防だけでなく、被災地の様々な職種の災害救援者が外傷性ストレス(惨事ストレス)をかかえていたことが分かります。本プロジェクトの背景には、こうした災害救援者の惨事ストレスの強さがあります。

本プロジェクトの活動目標は以下の通りです。
消防:全国で約150人程度の消防ピアの養成
看護:全国で50名の被災看護管理職経験者ネットワーク構築
他の職種:調査結果を踏まえて、各職種で30-50名程度の被災管理職経験者ネットワーク構築を目指しますが、具体的な内容は職種によって変わります。

本プロジェクトで構築を目指すシステムは、下記のピアサポートネットワークです。
①平常時には、各職種への研修や訓練、メイリングリストなどによる交流
②災害時には、被災地域職員への連絡をとり、必要な物資や情報提供
  現地からの要望で(研究者のコンサルテーションの下)
  被災地にネットワークメンバーを派遣し、傾聴ボランティアや個別面接、
  管理職への個別支援(電話を用いた傾聴などを含む)
対象となる災害救援者は、
  消防職員、看護管理職員、一般公務員、高齢者施設職員、障害者施設職員、教員、保育士です。
ただし、職種によって、異なるネットワークを構築する場合があります(現在調査中です)。

関与する組織・団体

  • 総括・すべての班:筑波大学人間系(大学院生涯発達専攻)
  • 消防班:東京消防庁惨事ストレス部会有志、福岡市消防局有志ほか
  • 看護班:東京医科大学医学部 山崎研究室、福島県・岩手県・宮城県の被災病院管理職有志
  • 公務員班:立正大学心理学部 髙橋研究室
  • 教師・保育士班:埼玉学園大学 佐々木研究室
  • 高齢者施設班:一般財団法人田中教育研究所、明治学院大学 岡本研究室
  • 障害者施設班:東北工業大学 ライフデザイン学部 古山研究室、国立のぞみの園 研究部 相馬研究室

「コミュニティ」紹介

本プロジェクトの「コミュニティ」は、地理的条件ではなく、同じ職種、同じ志を持つ仲間のネットワークを指します。上記のような活動を行うために、全国に散らばるピアの集まりが、本プロジェクトのコミュニティです。共有する志は、「被災地の中で被災者のために活動する仲間を支えたい。」です。
 本プロジェクトが対象とする災害救援者の職種は
   職業的災害救援者…消防職員、一般公務員
  災害時に救援する職業 …看護職、教員、保育士、高齢者施設・障害者施設職員です。

アプローチ

本プロジェクトでは、右記のような方法でプロジェクトを展開しています。  消防と看護では、研修の効果測定とネットワーク構築を行っています。研修の効果測定は、図のような形で行っています。

他の職種では、ストレスケアを行った組織への聴き取り調査、ストレスケアに関する管理職への実態調査を実施しました(結果は集計中)。

今後は、海外組織への聴き取り調査などを経て、ピアサポートを含むシステム構築のノウハウの体系化を目指しています。

課題

  (H27年6月現在)

現在の到達点は、職種(班)によって異なっています。消防班では第1期(東京)第2期(福岡)の研修を終え、効果測定の集計中です。看護班では、被災3地点での研修を終え、被災した看護管理職への質問紙調査も終了しました。教師・保育士班、公務員班、介護施設班では、被災地の各組織への面接調査を展開し、質問紙調査や海外調査の準備をしています。大きな課題は、各班の調査結果の共有化(これは今年度から対応を開始しました)と職種による支援の仕方の違いをどう統合的にとらえるかなどにあります。

アピールしたいこと

 

本プロジェクトは以下のような点に、独自性があります。
第1に、惨事ストレスケアの対象を拡大したことです。従来の惨事ストレス対策は、消防、自衛隊、海上保安庁が中心でしたが、本プロジェクトでは、これまでストレスケアの対象と見なされてこなかった職種の方へ支援の手を広げています。
第2に、専門家による治療ではなく、ピアサポートに焦点を当てた点です。従来は、精神科医療やカウンセリングという専門会によるアプローチが重視されてきましたが、専門家に対しては「こころの敷居」が高く、受診が進まぬ面があります。また、、専門が元々少ない地域では、長期的な支援を受けにくい面がありました。訓練された同職種者の支援は、受ける側の「敷居」が低く、長期的な支援も可能になります。
第3に、本プロジェクトが考案したシステム構築のノウハウに関しては、海外でも発表されていませんので、成功すれば新たなシステムが開発されると期待されます。

メッセージ

東日本大震災では、多くの災害救援者が惨事ストレスを受け、多くの対策が採られました。しかし、その効果は必ずしも万全とはいえませんでした。その背景には、精神科医療・臨床心理士が普及していなかった被災地が多かったことや、「こころの専門家」への敷居の高さや、消防や介護施設や病院では施設単位や自治体単位の対応しかできなかったこと等があげられます。

こうした背景を踏まえて、本プロジェクトでは、広域災害における災害救援者を支援するピア(ストレスケアの訓練を受けた同職者)サポートネットワークの構築とそのノウハウの構造化を目指します。次の広域災害に備えて、「被災地外の仲間(ピア)が仲間(被災した災害救援者)を支えるシステム」を作り上げたいと願っております。同じ志を持つ方のご協力やご参加を頂ければ、幸いです。

H26年度 採択課題 研究機関:平成26年10月~平成29年9月 カテゴリー1 医療における地域災害レジリエンスマネジメントシステムモデルの開発 研究代表者 棟近 雅彦(早稲田大学 理工学術院 教授)

概要

東日本大震災での医療の経験からも明らかなように、災害が発生しても医療事業を継続可能にすることは、医療機関だけでなく地域の安全・安心な社会を作る責務を持つ自治体にとっても不可欠な活動である。災害時における医療の継続性を確保するには、医療の地域レジリエンスを評価し、高めることが急務となっている。医療の地域レジリエンスとは、災害が発生しても、対象地域における医療事業に関係する組織・団体が、通常診療業務と災害時の緊急医療業務を継続・運用でき、万が一機能喪失した場合にも速やかに復旧できる状態・状況を常に維持し、さらに必要に応じて向上できる能力である。

本プロジェクトでは、医療の地域レジリエンスを高めるための方法論の提案を目的とする。

具体的には、埼玉県川口市周辺地域を対象コミュニティとし、医療の地域レジリエンスを評価するための評価モデル、およびそれを向上させる仕組みである地域災害レジリエンスマネジメントシステムのモデルを開発する。

目標

・医療の地域レジリエンスを高める施策としては,様々なものが考えられるが,マネジメントシステムを構築,運用することが,一つの有力な方法である。
・医療の地域レジリエンスを向上させる仕組みを,医療における地域災害レジリエンスマネジメントシステム (ADRMS-H)と呼び、川口市周辺地域での中核病院である川口市立医療センターと関連組織からなるADRMS-Hを構築することを通じて,次のことを達成する
(1) ADRMS-Hモデル構築の前提となる概念の明確化とモデル構築
(2) ADRMS-Hを継続的に評価するための評価モデルの開発

関与する組織・団体

  • 東海大学情報通信学部
  • 東京理科大学工学部
  • 川口市
  • 川口市立医療センター
  • 川口市災害拠点病院
  • 川口市医師会、薬剤師会、歯科医師会
  • 保健所

「コミュニティ」紹介

本プロジェクトでのコミュニティは、医療の地域レジリエンスを高めるために必要な関連組織の共同体である。具体的には、関与する組織・団体の図に示した川口市ADRMS-Hに関わる川口市、川口市立医療センター、医師会、薬剤師会等から成る。ただし、どこまでをADRMS-Hの範囲に含めるかは、本プロジェクトで解決すべき課題の一つである。

アプローチ

-2013昨年度、川口市周辺地域において、図1や図2のようなBCPを継続的に改善するためのマネジメントシステムである医療のBCMSモデルを開発 ※1
-これをADRMS-Hの基礎とし、拡張や修正すべき点を考察することで、ADRMS-Hモデルを構築、検証する

※1 経済産業省「事業継続等の新たなマネジメントシステム規格とその活用等による事業競争力強化モデル事業」の支援を得て実施

課題

  (H27年6月現在)

本プロジェクトの最終目的は,真に医療の地域レジリエンスを向上できるマネジメントシステムモデルを構築することである.そのためには,以下のアウトプットが不可欠と考えており,本プロジェクトでの達成を目指している.
・地域レジリエンスの定義,考え方
・レジリエンスの評価モデル,特に最終パフォーマンスを考慮した評価指標
・ADRMS-Hモデル
 ADRMS-Hの特性上,最初から参画すべき組織を特定して構築していくのは困難であり,その範囲を確定することも研究課題の一つである.

アピールしたいこと

 

・「ADRMS-Hというマネジメントシステムで,医療の地域レジリエンスを高めることができるか」という仮説を検証すること
-この仮説が検証できれば,マネジメントシステムは普遍的な仕組みとなりうるので,どの地域でも,誰が行っても医療の地域レジリエンスを高める可能性を大きくすることになる.また,マネジメントシステムの運用により,一過性ではなく,継続的な活動とすることができる.
・研究者らは、10の病院との共同研究でQMS-Hモデル開発、導入・推進を行ってきた。
-10病院は,地域,特性,規模など様々であるが,普遍的なQMS-Hモデルを開発し,医療の質向上に貢献してきた.病院におけるマネジメントシステムに関しては,豊富な経験を有している.

メッセージ

・現時点でも,日本では地震や噴火が頻発しています.いつでも東日本大震災の再来があってもおかしくない状況にあるといえます.パッチワーク的な活動ではなく,災害に備えたシステマティックな活動を行っていくことが,現在の日本に課せられた重要な課題と認識しています.そのためには,災害対応のためのマネジメントシステムの構築が不可欠と考えています.
・複数の関連組織からなるマネジメントシステムがいかにあるべきかは,明確になっていません.また,地域レベルの事業継続、レジリエンスの向上は、まだ極めて未知な部分が多い問題です。決して容易な課題ではありませんが,多くの方々の協力を得て,この課題に挑戦していきたいと思います.

リンク

H26年度 採択課題 研究機関:平成26年10月~平成29年9月 カテゴリー2 多様な災害からの逃げ地図作成を通した世代間・地域間の連携促進 研究代表者 木下 勇(千葉大学大学院 園芸学研究科 教授)

概要

東日本大震災を教訓として、共助の重要性が認識されたが、行政と地域団体、住民個人、さらに地域間の連携が図られていないのが実態である。

本プロジェクトは逃げ地図作成という避難時間・経路を描く住民参加ワークショップによって地域の世代間リスクコミュニケーションを活発にし、個人とコミュニティおよび地域間の連携による安全・安心なコミュニティ形成を支援する技術開発を目的とする。

具体的には、より早く避難できる経路の可視化に向けたワークショップの実践と検証を通して、子どもから高齢者まで平易に参加できるワークショップの準備・運営、作成された逃げ地図の活用に関するワークショップを開発し、さまざまなハザードに対する逃げ地図ワークショップパッケージの技術開発と情報共有プラットフォームの構築を目指す。

目標

この研究開発プロジェクトは、津波や土砂災害などの災害からの避難に関する地域情報の世代間の共有と地域間の連携を促進するリスクコミュニケーションの逃げ地図WSツールとそのマニュアルを開発し、様々な地域で利活用可能とすることを目標とする。

具体的には、
1. 子どもを含む誰もがその主旨と方法を容易に理解し、学校や地域などのコミュニティにおいて関係者が自ら逃げ地図作成ワークショップを準備・運営可能なマニュアルを開発する。

2. 作成された逃げ地図を防災教育・防災訓練・防災計画等に活用する方策やプロセスを示したマニュアルを開発する。

3. 開発されたマニュアルや各地で行われた逃げ地図作成ワークショップのアーカイブを共有するための情報共有プラットフォームの構築を行う。

関与する組織・団体

研究開発参加者
千葉大学
明治大学
株式会社日建設計
一般社団法人子ども安全まちづくりパートナーズ
一般社団法人ひと・まち・鎌倉ネットワーク
NPO法人陸前高田ふるさと創生会議
研究協力者
下田市・下田市立小中学校
河津町・河津町立小・中学校
南伊豆町・南伊豆町立小・中学校
賀茂地域(下田、河津、南伊豆等)地域住民団体(NPO法人、自治会等)
陸前高田市
陸前高田市地域住民団体(自治会、防災集団移転協議会、NPO法人等)
鎌倉市立中学校
秩父市役所
産業技術総合研究所
マヌ都市建築研究所

「コミュニティ」紹介

災害経験地域、巨大地震による津波、土砂災害等が心配される地域

●モデル地区
1)津波被災地、2)土砂災害も考慮する地区、3)大花等を考慮する地区

●展開地区
1)土砂災害被災地、2)土砂災害に応用する地区、3)全国に普及展開する地区
 ①避難当事者の目線でリスクを可視化
 ②対策による避難時間短縮効果を可視化
  →住民の自主的対策促進
逃げ地図の役割(DIG、HUG、クロスロード等との関係)
 ①避難行動・防災計画自主検討のプラットフォームづくり
 ②地域の状況に即した避難場所・経路の点検ツール

アプローチ

モデル地区の手法とプロセスの集約・整理
→これまでの逃げ地図作成の手法とプロセスから、マニュアルの骨子を作成する

逃げ地図情報共有プラットフォームの構築
→作成された逃げ地図情報を集約し、その成果を公開するポータルサイトを開設する。

モデル地区における実践と検証
→既存の津波危険地区のモデル地区に土砂災害危険地区のモデル地区を加え、津波と土砂災害の両面から考慮できる逃げ地図作成ワークショップの方法論を検討する。

逃げ地図作成活用マニュアルの開発
→モデル地区における実践と検証を受け、わかりやすいマニュアルを開発する。

展開地区における実践と検証
→開発したマニュアルを他の地区に適用し、汎用性について検証する。

課題

(H27年6月現在)

1/2,500白地図の上に避難到達点から129mごとに色別に道路を塗る標準的な逃げ地図づくりのマニュアル作成の道筋をまとめることができた。中学生以上のみならず小学校5、6年生対象にも可能で世代間のリスクコミュニケーションに有効と示された。課題としては地域で自らベースマップが準備できる体制、地図公開の著作権、避難目標地点や避難障害の条件設定を事前に吟味して検討の狙いとして効果的に設定する必要があげられた。

アピールしたいこと

 

1. 子どもからお年寄りまで誰もができる、わかりやすい、避難経路の検討のワークショップ。
2. 時間地形避難地図という時間距離で色分けして、目に見える形で安全な避難が検討される。
3. 逃げ地図づくりの過程で、ハザードマップ等のリスク情報、また現場の状況、避難場所.経路の点検ともなり、いざという時の対応等リスクコミュニケーションがはかられる。
4. 子ども版の逃げ地図、高齢者の逃げ地図等、ワークショップの結果の可視化された逃げ地図を見比べたり、また共にいろいろな世代が参加する逃げ地図づくり等をつうじて、世代間がつながる。安全面のみならず、地域の活力、少子化対策等にも発展する可能性もある。
5. 避難計画、防災計画等の地域の自主的な安全コミュニティづくりのプラットフォームを形成する。

メッセージ

災害に対する避難は最終的には「自分の命は自分で守る」しかありません。災害時の避難は様々な情報を瞬時に判断できるかどうかが生死の境目ともなります。そのため、ふだんからリスクの情報を読み、いざという時にどう避難するか、そんなリスク情報リテラシーの向上に「逃げ地図」づくりはたいへん有効な道具です。

避難到達地点から時間距離で色分けして地図上の道路を塗っていく作業は子どもからお年寄りまで誰もができて、いろいろ気がつく点も少なくありません。ハザードマップ等も初めて見る人も、この逃げ地図づくりから防災に意識を持つようになります。また、このワークショップによって地域住民の自主的主体的な相互扶助・防災活動が活性化する期待もされます。津波のみならず土砂災害等多様な災害も想定し、小学生も含めて世代間をつなぐリスクコミュニケーションツールとしてさらに改善、開発していくことに取り組みます。

リンク