「人と情報のエコシステム」研究開発領域について

RISTEXは、平成28年度の新規研究開発領域として「人と情報のエコシステム」を設定し、活動を開始しました。

ビッグデータを活用した人工知能、ロボット、IoTなどの情報技術の急速な進歩により、より豊かで効率性の高い社会が実現されるとの期待が高まっている一方、情報技術は様々な問題をもたらしうるとの指摘もなされ始めています。

RISTEXでは、それらの問題に適切に対処していくために、情報技術を人間を中心とした観点で捉え直し、社会の理解のもとに技術と制度を協調的に設計していくための研究開発を推進し、情報技術と人間のなじみがとれた社会の実現を目指します。

領域総括:國領二郎(慶應義塾大学総合政策学部 教授)

国領総括写真

近年、IoTを介したビッグデータ集積、収集されたビッグデータを活用した人工知能、さらには人工知能を搭載したロボットなどの情報技術の連鎖的で加速度的な進化が起こっています。そして、人間がコンピュータに対して優位だと思われてきた認知や文脈判断などにおいてまで、コンピュータが勝りはじめ、ショックをもって受け止められています。

出現しつつある大きな力に対して、社会的にその利便性に対する大きな期待がある一方で、その潜在的な負の側面に不安感が持たれるのはむしろ健全なことでしょう。確かに技術の力が人間に危害を与える方向に使われたり、暴走したりした時、その力が大きい分だけ被害も大きくなりえます。また、問題の現れ方が多様で、予測が難しいところも課題です。

私たちは、技術をめぐる多様なステークホルダーの間に、技術の萌芽段階から有効な対話を行うことで、情報技術を人間に真に貢献するものとして進化させることが可能だろうと思っています。また、逆に社会に向けて各種技術に関する情報提供(リスクコミュニケーションも含め)や技術リテラシー教育を進めることで、社会として技術を受け入れたり、活用したりする能力や意識も高めることも可能だと考えます。つまり人も技術も相互作用しながら変化を続けるものであることから、その双方への働きかけが可能であるというのが基本認識です。技術を社会的に配慮あるものにする努力と、人間の技術を活用する能力の向上の2つが合わさって、人間と技術が「なじんだ」状態を作ることができれば、技術開発と利用の相乗効果で、技術進化を加速させることにつながるでしょう。

私たちは、情報技術に関して、メリットや負のリスクをバランスよく評価し、技術開発や製品開発、あるいはそれらを実装していく際の社会的な意思決定にフィードバックするメカニズムが設計可能だと考えています。本研究開発領域では、情報技術を上流工程から人間を中心とした視点で捉え直し、制度と技術を協調的に設計していくための共進化プラットフォームの設計を推進していきます。

領域アドバイザー

氏名所属役職
久米 功一 株式会社リクルートホールディングス
リクルートワークス研究所
主任研究員
河野 康子 一般社団法人 全国消費者団体連絡会 事務局長・代表理事
城山 英明 東京大学 大学院法学政治学研究科 教授
砂田 薫 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 主幹研究員
土居 範久 慶應義塾大学 名誉教授
西垣 通 東京経済大学コミュニケーション学部 教授
信原 幸弘 東京大学 大学院総合文化研究科 教授
松原 仁 公立はこだて未来大学 副理事長
丸山 剛司 中央大学理工学部 特任教授
村上 文洋 株式会社三菱総合研究所
社会ICT事業本部 ICT・メディア戦略グループ
主席研究員
村上 祐子 東北大学 大学院文学研究科 准教授
(平成28年6月14日現在)

領域の目標

情報技術と人間のなじみがとれている社会を目指すために、情報技術がもたらすメリットと負のリスクを特定し、技術や制度へ反映していく相互作用の形成を行います。具体的には、

① 情報技術がもたらしうる変化(正負両面)を把握・予見し、アジェンダ化することで、変化への対応方策を創出する。

② 情報技術の進展や各種施策に対し、価値意識や倫理観、また現状の制度について検討し、望まれる方向性や要請の多様な選択肢を示していく。

①②のような、問題の抽出、多様なステークホルダーによる規範や価値の検討、それに基づく提示や提言までをサイクルとみなし、その確立のための研究開発を行います。また、このような社会と技術の望ましい共進化を促す場や仕組みを共創的なプラットフォームとして構築することを目指し、その機能のために必要な技術や要素も研究開発の対象とします。

研究開発テーマの概要

領域の目標を達成するために、下記A~B-5の研究開発テーマの公募による研究開発プログラムを推進します。「A.共進化プラットフォーム」は、領域全体が目指すアウトプットそのものですが、仕組みの構築や方法論自体も研究開発の対象とします。また、B-1~B-5の応用テーマへの取り組みの際にも、「A. 共進化プラットフォーム」の構築に貢献することが期待されます。

A:共進化プラットフォーム
情報技術がもたらしうる潜在的なリスクやメリットを的確に特定し、評価を行うための
方法論の研究開発。評価を情報技術の人間中心設計に反映させる方法論の研究開発。

B-1:法律・制度
情報技術がもたらしうる潜在的な負のリスクを軽減し、潜在的なベネフィットを最大化
するための、法的課題の特定と措置の提言を行う研究開発。

B-2:倫理・哲学
情報技術がもたらしうる潜在的な倫理的・哲学的課題の特定と指針を提示する研究開発。

B-3:経済・雇用
情報技術がもたらしうる潜在的な負のリスクを低減しながら、ベネフィットを最大化す
るための研究開発。

B-4:教育
情報技術が浸透する社会における変化への対応力を身につけるための研究開発。

B-5:人間中心視点による技術開発
開発の上流段階から社会的要請を意識し、多様なステークホルダーとの対話を通じた人間中心
の技術開発の実証研究。他の競争的な研究資金などとの連携によって、具体的な技術開
発の中で人間中心の考え方を取り込んだ際の課題や対応策について研究を行う。

関連情報

第13回社会技術フォーラム~新領域に関する社会との対話~

平成28年2月17日、平成28年度に新しい研究開発領域を創設するにあたっての活動の一環として、第13回社会技術フォーラム「人と情報のエコシステム~情報技術が浸透する超スマート社会の倫理や制度を考える」を開催しました。

詳しい情報は以下のURLからをご覧ください。

http://www.jst.go.jp/report/2016/160404.html

https://www.ristex.jst.go.jp/info/event/forum/no13.html

2016年度 人工知能学会全国大会

平成28年6月7日、人工知能学会全国大会にて本領域の構想を発表しました。

発表資料

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