『「未来カルテ」をウチの自治体で』実際に使ってみた話。~無料で使えるエビデンスデータで、人口減少社会を迎え撃つ!~ その2(全3ページ)

インタビューの会場となった千葉大学西千葉キャンパス
インタビューの会場となった千葉大学西千葉キャンパスでは同日、「未来カルテ」の手法を開発した「多世代参加型ストックマネジメント手法の普及を通じた地方自治体での持続可能性の確保」研究開発プロジェクト (倉阪 秀史 千葉大学 大学院 教授)の総括シンポジウム『人口減少下でいかに地域を持続させるか』を開催。「未来カルテ」をベースに、さまざまなリソースに注目しつつ地域を持続させる手法が紹介された。
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「2040年の うちのまち」の姿。課題とともに見えてきたものは?
「未来カルテ」&「未来ワークショップ」研究開発協力3自治体インタビュー (2ページ目)

取材日:2017年(平成29年)11月4日
場所:千葉大西千葉キャンパス

2017年10月30日、各種統計データなどを用いて現在の人口減少・高齢化傾向が継続した場合の2040年の各地域の状況を予測できるプログラム、「未来カルテ」が公開されました。 人口減少・高齢社会のインパクトを市町村レベルで実感でき、政策立案を支援するこのツールは、「日本の縮図」ともいわれる千葉県にある、市原市・八千代市・館山市の協力で研究開発が進められてきました。立地も産業もそれぞれの市で、「未来カルテ」はどのように使われたのでしょうか。

2.「2040年の うちのまち」の姿。
 課題とともに、
 「大事にしたいこと」も見えてくる。

――さて、先日「未来カルテ」が一般公開され、全国のすべての市町村において2040年の姿が、無料で確認できるようになりました。ここに至るまで、市原市、八千代市、館山市のみなさまにご協力をいただいたわけですが、最初に「未来カルテ」をご覧になったときの印象はいかがでしたでしょうか。館山市については先ほど、「悲壮感」と形容されましたが。

長谷川 ......だいたい皆さん想像していた通りのものがたいへん現実味を帯びた数値として見られたと(笑)。
ただ、その中でもすべてがダメじゃなくて、医療施設などがあって雇用は一定数維持されていくという部分が見えてきました。農漁業も、まあ当然人数が減っていくという数字は出てくるわけですが、「ここは強みとして残していかなくては」という部分もありました。
減っていくにせよ維持できるにせよ、「強み」や「残さなくてはいけない」という部分がよりはっきりとしてきました。危機感は常に持ちつつ、「では前向きにできるところはどこか」と考えなおすきっかけになりましたし、20年、40年といった長いスパンで見た戦略を考える方向に、庁内でも動き始めています。
地方創生の総合戦略策定の話がかぶっていた時期なのもよかったですね。「数値って大事だよね」と庁内でも言われていたところへ、しっかりした数値に基づいた「未来カルテ」があって、ちょうど私たちの求めていたものと合致したという。

小橋 市原市でも、「未来カルテ」によって、客観的なデータで本市の未来の姿を示したということは大変有意義でした。たとえば市の南部地域の人口が減少している地域での今後の空家の増加の可能性や、県内でもナンバーワンの耕作放棄地の面積がさらに広がるとか。産業構造にしても、臨海部のコンビナートの様子や、就業構造自体が変わってゆくとか。自分たちで推計することはできない部分を見せていただきたました。

竹内 八千代市の場合は、今まだ人口は増えているんです。そのせいもあるのか、まだ市役所内部でも人口減少に対する意識が正直薄いようです。実際、今まではどちらかというと人口が伸びることを前提に物事が決まっていました。
「未来カルテ」の推計において、当然ながら先々下がってゆく数字を見せられて、やっぱりこういった部分をちゃんと認識して、少しずつでも方向性を変えていかなければ、考えていかないといけない、という意識を改めて持ったところです。

市原市・産業構造の変化 2015 to 2040
市原市ではまず産業構造の変化に注目。たとえば農業では、現在2212人の農業人口が2040年には1287人に。農業人口一人当たりの耕地面積は2015年の1.7倍に増加する。

――その問題意識が、「未来ワークショップ」を経て市政に反映されることになりそうでしょうか?

竹内 残念ながら、八千代市は総合計画の初年度に「未来ワークショップ」が当たってしまいましたので、すぐ政策に反映とはいかなかったのですが......4年後には、10年間の次期計画ができることになります。そのときには、若い人の意見を取り入れるための手法を考えていかなければならないのですが、これは大変貴重なひとつの方法を見せていただけたのではないかと捉えています。

長谷川 館山市も、ちょうど計画を作り終わったタイミングでのワークショップでした。5年刻みで計画していきますので、既に2年たちましたから、次は3年後です。そのときにまた、今回の結果も含めて考えていきたいですね。

小橋 市原市では「未来ワークショップ」など市民の意見を参考に、「2026年のいちはらの姿」として、総合計画を策定しました。また、データを見ながら未来のまちづくりを考えるような出前講座を実施してするとともに、まちづくりについて考えるきっかけとして、学校の先生へ総合計画の内容をレクチャーし、小学校5年生から中学校3年生までの児童・生徒に冊子を配布するとともに、集会などで展開していくことを検討しています。

八千代市の人口は年々増加、その年齢構成 2015 to 2040
八千代市の人口は年々増加しているが、その年齢構成は2040年には大きく変化し、人口増加も頭打ち状態に。

――直接市政に反映するのとはまた違った部分でも、活用していただいているのですね。

小橋 総合計画を作るときにも、今までは「現状」と目の前の「課題」があって、解決策を考えるという考え方がメインだったと思います。今回は、現状のままでは未来はこうなってしまう、そうならないために今何をすることが大切かというように、バックキャスティングによって施策の検討を行ってきました。
 

長谷川 そもそも「未来カルテ」というのは、いまの現状がそのまま進んだとすれば将来こうなります、という推計値ですよね。あくまで「今の状態であればこうなってしまうよ」というのを考えるきっかけとして出していただいたのが、私たちにとってはよかったと思うんです。
特に高齢化や人口減少が進んでいる自治体には、ぜひ使っていただきたいと思います。こういうのを使えば、全体像が見えますので。

館山市の就業者人口予測 2015 to 2040
館山市の就業者人口予測。人口減から想像していたよりは、雇用が維持されている。「強み」として大切にしたい部分。

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関連リンク

「持続可能な多世代共創社会のデザイン」(研究開発領域WEBサイト)

「多世代参加型ストックマネジメント手法の普及を通じた地方自治体での持続可能性の確保」研究開発プロジェクト (倉阪 秀史 千葉大学 大学院 教授)

未来のストックが見える「OPoSSuM オポッサム」
(「未来カルテ」は、こちらのサイトからダウンロードできます)