「安全な暮らしをつくる新しい公/私空間の構築」研究開発領域について

安全な暮らしをつくる新しい公/私空間の構築

RISTEXは、平成27年度の新規研究開発領域として「安全な暮らしをつくる新しい公/私空間の構築」を設定し、活動を開始しました。

世帯の小規模化やソーシャルメディアの普及といった社会構造の変化や、それらの変化によってもたらされる「親密圏」と「公共圏」の変容に伴い、家庭や学校、職場、ネット上などの「私的な空間・関係性」における危害や事故等が顕在化し、安全・安心上の新たな問題となっています。

この研究開発領域では、こうした発見・介入しづらい「私的な空間・関係性」における事件や事故を予防・低減し、安全な暮らしを創生する研究開発を推進しています
安全な暮らしをつくる新しい公/私空間の構築」研究開発領域WEBサイト pp_bnner.gif

領域総括:山田 肇
(東洋大学名誉教授/NPO法人情報通信政策フォーラム 理事長)

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世帯の小規模化や少子高齢化の進展、地域社会からの個人の孤立、ソーシャルメディアの普及といった構造的な変化が社会に起きるに伴って、私的な空間・関係性の中での事件・事故は増加しつつあります。「安全な暮らしをつくる新しい公/私空間の構築」は、これらの事件・事故への問題意識を元に、平成27年度に開始された新しい研究開発領域です。

ネットいじめや虐待などの個々の事象に関する研究開発は実施され、多くの成果が積み上げられてきました。しかし、これらさまざまな事象の背景や対処策の共通点や、対処を阻む共通の制度上の問題を見出すような横断的な研究開発が活発に行われていたとはいえません。また、法制度上は可能であっても、現場における慣行や、出来ないはずとの人々の思い込みが、安全な暮らしの創生を妨げているかもしれません。児童虐待の事案に対して、児童相談所と警察の緊密な連携が必ずしも十分に進まないのは、それぞれの組織に制度上の隘路(あいろ)があるからなのかもしれません。私的な関係・空間で起きる事象の多くは機微に触れるため、個人情報の保護が求められますが、一方で、多くの関与者の間で情報を共有する必要があるかもしれません。

これらの研究開発における課題を踏まえ、この研究開発領域では、公と私を両端に置き、その間の「間(ま)」が果たす役割に注目し、「間」に公と私が協力する新たな仕組みを作ろうとしています。

プライバシーに配慮しつつ適切に介入するにはどうすればよいのか、「間」にどのような機能を持たせればよいのか、それこそが研究開発課題です。情報通信技術を活用しての生活モニタ、近隣住民によるさりげない声がけ、関係者内での情報共有など、直接的、あるいは間接的で、さまざまな「間」の仕組みについて研究開発が進展し、安全な暮らしの創生に寄与することを期待しています。

領域の概要

近年、日本では、犯罪の認知件数は減っていますが、家庭や職場、学校などにおいて継続的な暴力を受けるケースや、サイバー空間での関係性に由来する事件やいじめが顕在化し、安全・安心上の新たな問題となっています。また、交通事故など公的空間で起こる事故が減る一方で、転倒や溺死などの家庭内事故が増加するなど、外部から発見・介入しづらい「私的な空間・関係性」における問題が顕在化しています。

こうした問題が顕在化する背景には、世帯の小規模化や高齢化、地域社会からの個人の孤立、インターネットやソーシャルメディアの普及・拡大といった社会構造的な変化と、それらの変化によってもたらされる「親密圏」と「公共圏」の変容に、既存の安全機能(法制度・公的組織、あるいは、家庭・地域社会による予防や支援機能)が対応しきれなくなっていることがあります。

従来、親密圏については自助、自治に任せるものであるとの考えもありましたが、国民の関心や人権意識の高まりもあり、多様なレベルでの社会的な支援や介入が徐々に広がりつつあります。センサーやロボットなどの科学技術を使い、親密圏での加害・被害またはそれに繋がるリスクの早期発見や要因解消に貢献する研究開発も求められてきました。社会的な支援という側面からも親密圏と公共圏の関係性は変容していますが、一方に、社会的な支援を届けようにも制度が壁となる場合もあります。

さらに、文部科学省科学技術・学術審議会における第5期科学技術基本計画に向けた議論にあるように、望ましい超サイバー社会の実現に向けた変革やサイバー空間と実空間の一体化による変化が進んでいます。こうした流れは、私的な空間・関係性やプライバシー概念の変化に大きく関連すると同時に、技術的な側面からは、ビッグデータ解析技術を用いることなどにより、事件・事故などの予見・発見を容易にすることが期待されます。

そこで本研究開発領域では、公と私が協力して、発見・介入しづらい空間・関係性における危害・事故を発見し、低減・予防(予見・介入・アフターケア)できる仕組みづくりやその活動に資する制度と技術の提示に貢献する研究開発を推進します。

領域の目標

本領域における具体的な目標は以下のとおりです。

(A)世帯の小規模化や高齢化、サイバー空間の拡大による親密圏の変容を踏まえて、発見・介入しづらい空間・関係性における危害、事故の低減・予防(予見、介入、アフターケア)に資する新たな手法を現実の問題とニーズに基づいて提示する。

(B)これらの成果をもとに、発見・介入しづらい空間・関係性における危害や事故の低減に資する制度・政策とその実現可能性を提示する。

(C)提示する取り組みや施策が継続的に実施されていくために、社会システムへの統合可能性という観点で、これらの手法を導いた思考・考え方を共有するネットワークを構築する。

プログラム

研究開発領域の設定評価報告書中間事後
活動報告書評価報告書
本領域の設定について      

研究開発プロジェクト

 研究開発実施報告書終了報告書事後評価報告書
初年度2年度3年度
平成27年度採択

養育者支援によって子どもの虐待を低減するシステムの構築

黒田 公美(国立研究開発法人 理化学研究所 脳科学総合研究センター 親和性社会行動研究チーム チームリーダー授)

     

親密圏内事案への
警察の介入過程の見える化による
多機関連携の推進

田村 正博(京都産業大学 社会安全
・警察学研究所
所長
       

多専門連携による司法面接の
実施を促進する
研修プログラムの開発と実装

仲 真紀子(立命館大学総合心理学部
教授)
       

高齢者の安全で自律的な経済活動を見守る社会的ネットワークの構築

小賀野 晶一(中央大学法学部
教授)
       

全国調査データベースを用いた児童虐待の予防・早期介入システムの開発

森田 展彰(筑波大学医学医療系
准教授)
         

プロジェクト企画調査

 終了報告書事後評価結果報告書
本編資料
平成27年度採択
都市型コミュニティ(川崎市)における援助希求の多様性に対応した介入・支援に関する調査 島薗 進(上智大学グリーフケア研究所 所長)
ソーシャル・ビッグデータによる「いじめ問題」の検知に関する調査 曽根原 登(大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立情報学研究所情報社会相関研究系 教授)  
人と人の間の距離感を把握する社会システムに関する調査 藤原 武男(国立研究開発法人国立成育医療研究センター社会医学研究部 部長)
子どものSOSの発見と支援のためのプラットフォーム構築調査 吉永 真理(一般社団法人子ども安全まちづくりパートナーズ非常勤研究員 昭和薬科大学 教授)