【プロジェクト訪問】プロジェクトシンポジウム「高齢者の詐欺被害を防ぐしなやかな地域連携モデルの研究開発」-高齢者の詐欺被害減少のための活動-

開催日:2018年(平成30年)2月7日
会場:アウガ(青森県青森市)

「安全な暮らしをつくる新しい公/私空間の構築」研究開発領域
「高齢者の詐欺被害を防ぐしなやかな地域連携モデルの研究開発」(平成29年度採択)
研究代表者:渡部 諭(秋田県立大学 総合科学教育研究センター 教授)

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青森駅前は雪化粧でしたが、幸い雪は止み、冷え込みもさほどではありません。
研究開発の関与者のひとつ青森県消費生活センターのキャラクター「テルミちゃん」が、応援に駆けつけてくれました。
領域アドバイザーの遊間先生も、さっそくご挨拶。

特殊詐欺の手口は、年々巧妙に多彩になりつつあります。 渡部プロジェクトでは現在、高齢者の心理特性に注目し、詐欺被害の遭いやすさを判定するツールを開発中ですが、研究代表者の渡部先生方は「高齢者を詐欺から守るにはどうすればいいか」という問題に心理学的観点から何年も取り組んでこられました。今回のシンポジウムでは、プロジェクトの内容を解説し高齢者の詐欺被害の状況や具体的な対策を共有するとともに、いままで地域で活発な活動を続け渡部先生方とも連携してきた複数の組織の活動が、具体的に紹介されました。

複数の組織が、積極的な取り組みを展開
青森で激減した、高齢者の詐欺被害

青森は、オレオレ詐欺のハードルが高い県だそうです。なぜならば、息子のフリをするには、津軽弁や南部弁を使いこなさなくてはならないから......。難易度高っ! と、秋田育ちの取材者も納得ですが、それでも平成28年青森県内の特殊詐欺被害総額は2億319万円にのぼりました。
平成29年、被害総額は7,200万円にまで大幅に激減しました。その原因ははっきりしませんが、地元での対策活動が効果を上げているということも、十分に考えられそうです。
たとえば青森県消費生活センターが展開中の啓発キャンペーンでは、不審電話の相談を呼びかけるキャッチーなキャラクターを前面に押し出し、ワークショップで作成した「消費者被害防止テーマソング」を流し、目や耳に訴えかけるPRを展開。さらに、当事者の周囲にいるひとにも、「相談してみたら」という声かけを推奨するなど、多面的な試みを続けています。
一方、サービス利用者からネットワークを広げる青森県生活協同組合連合会は、地域の皆さんと直接触れ合う場が多いことが強みです。本人の様子から「おかしい」と気づいて直接詐欺被害を食い止めた事例もあり、「今後はアジア全域にこの活動を広げたい」と意気込んでいます。


プログラム

■開会挨拶

■主催者挨拶

主催者挨拶・青森大学付属総合研究所所長・青森大学学長 崎谷康文氏

■研究発表

「『高齢者の詐欺被害を防ぐしなやかな地域連携モデルの研究開発』:プロジェクト全体及び高齢者対応グループの紹介」
渡部諭氏 秋田県立大学総合科学教育研究センター 教授

「認知機能が低下した高齢者に関する研究と未来予想図」
上野大介氏 京都府立医科大学

「青森実装グループの活動について」
澁谷泰秀氏 青森大学社会学部 教授

「地域で高齢者を被害から守る取り組みについて-神奈川フィールド-」
岩田美奈子氏 一般社団法人 シニア消費者見守り倶楽部

「高齢者の詐欺被害を防ぐための情報共有に向けた法政策上の課題」
藤田卓仙氏 慶應義塾大学

「青森県における特殊詐欺の現状について」
平田武雄氏 青森県警察本部生活安全企画課 課長補佐

「高齢者の消費者被害防止に関する県の取組」
石塚雄士氏 青森県消費者協会 青森県環境生活部 県民生活文化課 主幹

「青森県生活協同組合の取り組みと高齢者の詐欺被害減少に関する活動」
鎌田敦子氏 青森県生活協同組合連合会 常務理事

神奈川県ではケタ違い、被害総額はH28年40億超
心理学や医学の知見から、効果的な対策を導く!

もう一か所研究開発の実証フィールドである神奈川県は、青森県とは人口や地域性など、まったく違った特性を持つエリアです。被害総額もH28年で40億867万円にのぼり、H29年はそれをさらに上回りました。、現在は、本人へ注意喚起を促し、支援者の意識を高め、最新の情報を共有して防止活動に取り組んでいます。
こうした被害の深刻さとは裏腹に、たとえば高齢者の認知機能と詐欺脆弱性の関与についての研究などは、日本国内では皆無なのだそうです。
このプロジェクトでは、「詐欺被害に遭いやすい、とはどういう特性なのか」を心理学や医学、社会学などの見地から分析し、先に挙げたさまざまな活動と連携しつつ、対策アプリの開発など、被害を防ぎうる具体的な手法を探ります。また、同じ公私領域のプロジェクトである「高齢者の安全で自律的な経済活動を見守る社会的ネットワークの構築」研究開発プロジェクトとも連携し、その成果も継承しつつ、全国展開をにらんでの活動を展開していきます。

前出の通り、平成28年から29年にかけて、青森での被害額は半減しました。ここからさらなる被害の縮小を実現できれば、こんな素晴らしい成果はありません。全国あらゆる地域に導入可能な成果を、期待したいと思います。

■パネルディスカッション

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左から、井上隆氏、渡部諭氏、上野大介氏、澁谷泰秀氏、岩田美奈子氏、藤田卓仙氏、遊間和子氏(RISTEX領域アドバイザー)、森俊明氏(株式会社リバティ・イノベーション 代表取締役)、江口洋子氏(慶應義塾大学)
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足元の悪い中、約70名の方々にお集まりいただきました。
※所属・役職は、取材当時のものです。
(文責:RISTEX広報 公開日:平成30年8月28日)