「脳科学と社会」採択プロジェクト

【平成16年度採択】

顔認知のメカニズム:その機能発達と学習効果の解明

柿木 隆介(大学共同利用機関法人自然科学研究機構生理学研究所 教授)

「顔認知機能」の障害は社会生活に歪みをきたすだけでなく、教育現場においても様々な問題を生じている可能性があります。本研究の目的は、脳波、脳磁図、機能的磁気共鳴画像(fMRI)、近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)といった非侵襲的Neuroimaging手法を用い、その専門家と乳幼小児心理学の専門家が協力して、人間における顔認知に関する発達学習過程を明らかにすることです。研究成果を教育現場に還元することが最終的な目標です。

柿木隆介 教授 関連Webサイト
生理学研究所 統合生理研究系感覚運動調節

音声言語知覚機構の解明と英語教育法への展開

【脳科学と社会 平成16年度採択:タイプI】

小山 幸子(北海道大学 電子科学研究所 助教授)

ヒトは優れた音声処理能力を備え、不特定話者、異なる話速、ノイズの多い環境に柔軟に対応しています。しかし、語音の構成・リズムは言語によって異なるために「聞き取り」は外国語学習の重要な課題であり、また小学校への英語教育の導入が開始され、音声面に重点を置いた英語教育カリキュラムの作成が必要とされています。本提案では、行動指標および生理指標(脳磁場、脳波)を用いて音声言語知覚の神経機構と発達、加齢に伴うその動態を解明します。具体的には、小学生から老齢者までの日本語話者を計測対象として、音素、リズム、時間分解能の3つの側面を中心に大脳の聴覚皮質の音声言語処理機構と第二言語の音声学習臨界期について解明します。得られた知見から聞き取り能力を効率的に向上させる英語教育カリキュラム試案を提言し、1.小学校への英語公教育導入内容の最適化 2.中学~大学の英語音声教育カリキュラムの向上 3.英語教師研修の強化を目指します。

小山幸子 助教授 関連Webサイト
小山幸子研究グループ

非言語的母子間コミュニケーションの非侵襲的解析

【脳科学と社会 平成16年度採択:タイプI】

篠原 一之(長崎大学 大学院 医歯薬学総合研究科 教授)

母・子の行動学的変数を同時に記録・解析するシステムを作成し、臨床場面でのデータや生理学的データを考慮することによって、母・子の情動と関係性を評価するシステムを作製します。このシステムを用いて母子間コミュニケーションに関与する感覚情報の同定を行い、バーチャル母子間コミュニケーションや母性教育プログラムを作成することによって、子の情動発達、母の母性獲得、母子間コミュニケーションに対する支援法を提言します。

篠原一之 教授 関連Webサイト
長崎大学生理学第二教室

双生児法による乳児・幼児の発育縦断研究

【脳科学と社会 平成16年度採択:タイプII】

安藤 寿康(慶應義塾大学 文学部 教授)

人間の心身の発達は、遺伝子だけでなくたくさんの環境の影響も受けています。この遺伝と環境の総体的な影響を明らかにできるのが双生児法です。本研究では主に2005年に首都圏(東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県)で生まれる双生児の悉皆的レジストリーを作成し、そのうち約2000組の協力を得て、アンケートや個別面接調査、そして光トポグラフィーによる調査などによって、心身の発達過程を5年間にわたり縦断的に調査します。

この研究から、気質や運動能力、認知・言語能力、問題行動などが、遺伝、家族が共有する環境、一人一人に独自な非共有環境から、発達過程のどの時点で、それぞれどの程度の影響を受けているかがわかり、子どもの健やかな発達を支えるための教育環境を考える上での基礎情報を提供します。

安藤寿康 教授 関連Webサイト
首都圏ふたごプロジェクト
生命科学研究 武見奨励賞

社会性の発達メカニズムの解明:自閉症スペクトラムと定型発達のコホート研究

【脳科学と社会 平成16年度採択:タイプII】

神尾 陽子(国立精神・神経センター 精神保健研究所 児童・思春期精神保健部 部長)

本研究は「社会性」の発達メカニズムの解明を目的に、社会的障害を主症状とする自閉症スペクトラムと定型発達について、乳幼児期からの行動学的評価・認知機能評価そして非侵襲的脳機能計測による前向きなデータベースを構築します。行動発達とそれに伴う脳内ネットワークの発達メカニズムを解明することにより、自閉症スペクトラムの超早期診断や早期介入法の開発や、さらには多様な個性に対する「社会性を育む」教育への提言を行います。

高齢者と学習障害の脳機能改善コホート研究

【脳科学と社会 平成16年度採択:タイプII】

川島 隆太(東北大学 加齢医学研究所 教授)

本研究では、脳科学の知識や技術を応用して健常高齢者の脳機能の加齢に関するコホート研究を行うことにより、健常な高齢者の心身の健康を維持・向上させ、日々の生活をよりイキイキと楽しんでいただくことができるようになるための日常生活上の工夫を明らかにします。痴呆予防方法等を開発し、医療費や介護保険などの社会保障費の低減を可能とする少子高齢化社会に対する前向きの対応策を提言します。さらに、学習障害を持っておられる方々を対象とした認知発達障害に関するコホート研究も行います。学習障害を持たれる方々の脳機能や認知機能と生活習慣などの関係を調査し、学習障害の発症機序の解明を目指します。コホート調査の中から、学習障害の改善に有効な介入方法を見つけ出し、これを生活の中で積極的に行うことで認知発達障害児の健やかで心豊かな脳機能発達を促す方法を開発することを目標とします。

川島隆太 教授 関連Webサイト
脳機能開発研究分野 川島隆太研究室
第34回(平成21年度)井上春成賞授賞

言語の発達・脳の成長・言語教育に関する統合的研究

【脳科学と社会 平成16年度採択:タイプII】

萩原 裕子(首都大学東京大学院 人文科学研究科 教授)

本研究は、言語の音声・音韻,語彙・形態、統語,意味,談話などの各領域にわたる言語能力検査を開発し、日本語を母語として獲得する幼児、英語学習者、非母語としての日本語学習者を対象とした追跡調査を行い、典型例について行動実験・脳機能計測実験を行います。言語の獲得と学習に関わる遺伝要因と環境要因,教授法、学習法の相互作用を見いだし、脳の成長に基づいて、母語の健全な発達を保証しつつ、「いつ、何を、どのように導入するのがよいか」という最適な外国語学習条件を提示することを目的とします。

萩原裕子 教授 関連Webサイト
萩原研究室

教育支援のためのバイオメンタル技術の開発

【脳科学と社会 平成16年度採択:タイプII】

六反 一仁(徳島大学 大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部 教授)

心の健全な発達を阻害する養育環境等により心を病む学生が急増しています。

本研究では、大学生を対象に、従来の調査法による行動学的・心理学的解析に加え、ストレス評価用DNAチップによる遺伝子発現プロファイリング、光トポグラフィーを用いた前頭葉の反応性評価、唾液を用いた内分泌検査、染色体DNA安定性、睡眠関連遺伝子の解析などの新しい生物学的評価法を行い、これらの評価を有機的に融合させた追跡調査を行います。

本研究を成果を通じて、心の発達を阻害する生物学的素因及び環境リスク要因を抽出し、養育・教育環境を改善するための指標を明らかにし、教育現場における心の健康を推進する新たな予防社会技術システムを構築を目指します。

六反一仁 教授 関連Webサイト
徳島大学医学部・大学院 ストレス制御医学

非侵襲的脳機能計測を用いた意欲の脳内機序と学習効率に関するコホート研究

【脳科学と社会 平成16年度採択:タイプII】

渡辺 恭良(大阪市立大学大学院 医学研究科 教授、(独)理化学研究所分子イメージング研究プログラム プログラムディレクター)

学習の効率には意欲が反映され、疲労度と表裏一体に意欲低下が起こります。また、完成の喜びや報酬(良い成績、良評価)の期待により疲労感が修飾を受けて意欲が勝る局面があることも事実です。高い効率の学習の模索、学習障害の機序解明には、この意欲-疲労-報酬-学習の4態問題は避けて通れません。本研究では、fMRI等の非侵襲的脳機能計測法を駆使して、学習意欲の脳機構、学習・知的作業による疲労と意欲の同時計測、学習成立の脳機構と意欲との関連、学習意欲障害に関する遺伝的・環境的要因の研究を追跡的研究手法と組み合わせて行い、実際の学習現場における種々の学習意欲向上プログラムを創成することを目指します。

渡辺 恭良 教授 関連Webサイト
大阪市立大学大学院医学研究科 システム神経科学
【平成15年度採択】

学習困難の脳内機序の解明と教育支援プログラムの開発・評価

正高 信男(京都大学 霊長類研究所 教授)

本研究は、学習困難の質の脳内機序を解明し、それぞれの脳機能の障害に応じて、もっとも適切かつ体系的な教育支援方法を構築することを目的とします。fMRI、近赤外分光(NIRS)を用いて、学習困難の症例と脳障害との対応関係を解明し、障害、発達支援、認知、脳の研究を有機的に結びつけることで、学習困難の根本にある認知機能、脳機能の特徴とその可塑性を明らかにし、それらの基盤にもとづいた教育方法を、社会技術として構築します。

発達障害の遺伝的要因と環境要因の相互作用に関する研究

桃井 真里子(自治医科大学 医学部 教授)

発達における知的、認知機能の偏りを示す病態(自閉症、学習障害、多動性障害、行動障害等)は、遺伝的要因が大きく、環境要因によりその問題の発現が規定されます。本研究は両要因の相互作用の解析法として、発達障害に関連する多数の遺伝子群の遺伝子型、または、SNPと生育歴中の環境要因を一定複数集団で調査し、育児上、学習上、行動問題の発生に影響を与える因子の抽出と相互作用を見いだし、発達障害のみならず発達一般の知見へと広げることを目的とします。

【平成14年度採択】

知的学習の成立と評価に関する脳イメージング研究

仁木 和久(独立行政法人 産業技術総合研究所 脳神経情報研究部門 主任研究員)

本研究では、人間の知的な学習・教育原理の脳科学的な解明を目指して、問題解決等高次認知の発現時に起こる瞬時学習である"知的学習"に注目し、知的学習の成立とその記憶の利用に関する脳イメージング研究を遂行し、知的学習の成立条件を明らかにします。

教育への具体的な取り組みとしては、知的学習のモデル化を計り、教育現場のデータに適用し、授業法の良さを脳科学的に解明することにより、授業法の評価や授業法原理の構成を試みます。さらに脳研究と教育が融合した研究分野の確立に向け、教育や自己能力開発、創造力開発等、人間と社会の活性化につながる提言を目指します。

学習機構の生後発達の分子基盤の解明とその応用

真鍋 俊也(東京大学医科学研究所 教授)

動物が成長するにしたがって、学習能力を習得していく過程には不明な点が多い。

本研究では、その過程を分子機構面から解明するために、記憶・学習に重要な役割を果たす中枢神経系の海馬に焦点を当て、シナプス可塑性の誘導に重要な役割を果たすグルタミン酸受容体の1種であるNMDA受容体の機能調節機構の解析を行います。

具体的には、脳内のRas蛋白によりNMDA受容体のリン酸化が発達時期依存的に制御されるとの仮説のもとに、学習能力の生後発達に対するRas欠損の効果を明らかにします。また、NMDA受容体のリン酸化を強制的に操作した変異マウスで、シナプス可塑性と学習能力にどのような変化が生じるかを検討し、NMDA受容体修飾が学習機構の生後発達に及ぼす影響を明らかにします。

学習・記憶・認知・意欲機能の基盤と不登校

三池 輝久(熊本大学 医学部 教授)

本研究では、集中力持続リズムや活動・休養のメリハリを支える生体リズムが、子供達の学力を培う学習意欲の基盤として、極めて重要であるとの認識に立ち、健康状態にある学生・生徒と学習・記憶・認知・意欲の脳機能低下を伴う小児型慢性疲労症候群(CCFS)としての不登校状態にある学生・生徒に対して 1.日常生活における活動・休養リズムの解析 2.疲労・生体リズム変調の評価 3.時計遺伝子の解析 4.意欲に関わるドーパミントランスポーター遺伝子解析 5.事象関連電位、画像解析を行い、子供達の学習・記憶・認知・意欲を賦活する生活環境の在り方や適切な教育システムおよび授業時間の配分等について情報を得、小児型慢性疲労症候群(不登校)学生・生徒の治療・予防法の確立を目指します。

【平成13年度採択】

前頭前野機能発達・改善システムの開発研究

川島 隆太(東北大学 未来科学技術共同研究センター 教授)

本研究では、脳科学的根拠に裏付けられた、前頭前野機能の発達・維持・増進可能とする学習システムの理論とアプリケーションを開発することを目的とし、教育心理学者と脳科学者、障害者教育実践者、高齢者ケア実践者からなるチームで、痴呆を伴う高齢者を対象とした教育実践と教育心理学的理論構築、脳イメージングをくり返すことにより、教材及び教育方法を開発します。

人間のコミュニケーション機能発達過程の研究

定藤 規弘(岡崎国立共同研究機構生理学研究所 大脳皮質機能研究系心理生理学研究部門 教授)

本研究では、非侵襲的脳機能画像法を用いて、コミュニケーションの基盤としての感覚統合の発達過程を解明することを目指し、視聴覚・感覚統合に関与する神経回路の同定とその形成過程、感覚脱失にともなう機能領野再構築機序を解明します。

具体的には、コミュニケーションの言語・非言語性要素それぞれを担う機能分野の発達機序を明らかにすることにより、子供の個々のニードに基盤をおいたコミュニケーション能力を高める教育法の確立に資することが期待されます。

神経回路の発達からみた育児と教育の臨界齢の研究

瀬川 昌也(瀬川小児神経学クリニック 院長)

本研究は乳・幼・小児期に発症、行動、情緒、認知・知能障害を主軸とする遺伝性素因性中枢アミン系神経疾患の病態を究明、それぞれに関与するアミン系神経と神経回路を究明、脳がこれら機能を獲得する臨界齢、そこに関与するアミン系神経と環境要因を解明、子供の脳が知性と理性を獲得する臨界齢、そこに必要な養育法の究明を目的とします。これまでの研究から各臨界齢に固有のアミン系神経が固有の神経回路を介し、固有の高次脳機能の発現に関与することを示唆(図参照)、またこれら神経系の活性の良否は睡眠要素、ロコモーションの良否に現れ、その異常を臨界齢に矯正することが小児の情緒・行動異常の改善につながることを明らかにしました。

※ 研究実施終了報告書は、研究代表者が研究終了時点の結果をまとめたものです。記載内容は当時のものであり、その後の進捗や他の研究により導出される結論が変わることもあります。

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