東日本大震災におけるRISTEXの取り組み

2011年3月11日に発生した東日本大震災で亡くなられた方々のご冥福を深くお祈り申し上げますとともに、被災された皆様、ご家族の皆様に心からお見舞い申し上げます。 また、一日も早い復旧をお祈り申し上げます。

RISTEXは 「社会における、社会のための科学」という理念に基づき、日ごろから高齢化、地球温暖化、安全・安心などさまざまな「社会の問題解決」に向けた研究開発を行っています。今回の東日本大震災においてもいくつかのプロジェクトが被災者・被災地の問題を解決するための対応や支援活動を始めています。ここでは、その取り組みについて紹介します。

「研究開発成果実装支援プログラム」東日本大震災対応・緊急提案募集について

 RISTEXでは東日本大震災の復旧・復興に当たり、即効性のある研究開発成果に関して、特に被災地域に実装する取り組みを数件募集しました(募集は終了しました)。
 支援期間は活動開始後、最長平成24年3月31日までとし、金額は1件あたり500万~1000万円です。
 今回の緊急公募は、23年度内限りの支援となることから、社会や都市インフラの再構築、ロジスティックス合理化、NPO現地支援に関する手法開発など、取組内容が具体的で災害復旧・復興への効果が現段階で既に明確なものに限られます。

RISTEXのプロジェクトの取り組みについて

RISTEXでは日ごろから高齢化、地球温暖化、安全・安心などさまざまな「社会の問題解決」に向けた研究開発を行っており、東日本大震災においても、いくつかのプロジェクトが被災地に貢献する対応や支援活動を行いました。

「科学技術と外交・安全保障のための連携・協働の基盤づくりプロジェクト」の取り組みについて

 RISTEXの「科学技術と外交・安全保障のための連携・協働の基盤づくりプロジェクト」は国際的な外交・安全保障全般を対象に、科学技術コミュニティと外交・安全保障コミュニティとの間にかけ橋を作ることを目指すグループです。日ごろ構築してきた日本国内外における産官学の重層的なネットワークが今回の震災及び福島第一原発の事故の対応に即したものであることから、放射線災害情報などの配信によるリスクコミュニケーション支援、事態対応に資する資機材情報の提供、被災地支援情報の収集・配信による支援強化の補助、また海外・在日外国人のための情報配信などを積極的に行っています。
 またこれまで築いてきた海外の関係機関とのネットワークを通じて、今回、米国防総省の省庁横断型テロ対策技術開発作業部会から個人用放射線線量計の無償提供の申し出を受けました。放射線に曝されるとセンサーが瞬時に変色し、センサーの変色を上下のカラー・バーの色と照合して被ばく量を各人が簡単に判断できる小型(切手サイズおよび名刺サイズの二種類)の線量計約30、000枚が無償で供与され、政府窓口を通して福島第一原発付近で働く自衛隊・消防などの各関係者に配布されました。また、茨城交通のバスの運転手さんなど、民間企業の関係者にも一部が提供されました。

その他調査・報告

シンポジウム等


東日本大震災に関するRISTEXの研究開発プロジェクトの取り組み

科学的に信頼できる情報をマスメディアと市民に向けて発信するサイエンス・メディア・センター・オブ・ジャパン

 サイエンス・メディア・センター・オブ・ジャパン(SMCJ)は、RISTEXの「科学技術と人間」研究開発領域のプロジェクトが立ち上げた組織であり、科学技術の専門家とジャーナリストの仲立ちとなり、科学情報をより正確で多面的に伝えることでメディアに流通する情報の質を高めることを目的として設立されました(研究代表者:瀬川至朗・早稲田大学政治経済学術院教授)。
 今回の大震災では地震についてのさまざまな科学情報をWEBサイトから発信、福島第一原発の事故による放射能汚染、放射性物質、被ばくなどの影響についても社会的不安が増大する中、さまざまな専門家の支援を得て科学的に信頼できる情報を更新し続け、メディアからも一般市民からも大変高い評価を得ています。

サイエンス・メディア・センター・オブ・ジャパン(SMCJ)のWEBサイト  http://smc-japan.org/

平時から積み重ねた津波に関する啓蒙・啓発活動により、多くの命が救われた

 群馬大学大学院教授の片田敏孝氏は、RISTEXの「安全安心」研究開発領域で津波防災教育ツール「津波災害総合シナリオ・シミュレータ」を開発、「研究開発成果実装支援プログラム」で同ツールを活用し災害に強い地域をつくるための住民への意識啓発活動や小中学生への防災教育活動を何年にもわたり継続してきました。
 今回の大震災では、実装活動の拠点の一つであった岩手県釜石市も想定をはるかに上回る津波に襲われました。海から1キロ以内にある小中学校では校舎が3階まで水没しましたが、日ごろから行っていた防災教育・訓練により、中学生が小学生を引率して冷静に避難を行い、学校から避難した生徒は全員無事に逃げることができました。

今回の地震で実際に小中学生が避難している様子(片田先生ご提供)

地震に関連する情報をGIS地図上に統合した緊急マップの作成

 今回の地震では、戦後初めて複数の都県が同時被災し、国の関わり方も含めて、直後の応急対応から長期的な復興まで災害対応に関してさまざまな新しい課題が生まれつつあります。災害対応に関わる公的機関・民間組織の数もこれまでに類を見ないほど多数にのぼることが予想され、組織間の連携を確実にし、効果的な災害対応を進めるためには、関係する人びとが状況認識を統一することが不可欠です。
 そこで、「研究開発成果実装支援プログラム」の実装責任者・林春男氏(京都大学防災研究所 教授)を中心に、「東北地方太平洋沖地震緊急地図作成チーム (Emergency Mapping Team)」が結成され、内閣府防災担当の協力を得て地図作成活動を開始、現在も継続中です。さまざまな防災関係機関から提供されている情報をWEB上で重ね合わせることにより、関連情報を一つの地図上で確認することができるため、各支援機関の意思決定や、今後の復旧・復興に役立つことが期待されています。今回は静的マップだけではなく動的マップも用い、本チームは過去に2007新潟県中越沖地震において新潟県災害対策本部内に地図作成班を構築し、活動を行った実績があります。

東北地方太平洋沖地震緊急地図作成チームのWEBサイト  http://www.drs.dpri.kyoto-u.ac.jp/emt/


被災住宅の被害認定調査方法を自治体職員に研修

 震災時、自治体が建物の被害調査を迅速に行い罹災証明書を発行することは、被災者への生活再建支援のために大変重要ですが、大混乱で人手が不足する中、被災住宅の被害認定調査には建築や財務に詳しい職員だけではなく、通常は関係ない業務に就いている専門的知識のない職員も駆り出されることがあります。
 「研究開発成果実装支援プログラム」の実装責任者・田中聡氏(富士常葉大学 大学院環境防災研究科教授)は、専門的知識がない職員が建物の被害認定調査を行っても「平等」な判定結果を導き出すことができるよう、自治体の支援業務をパッケージとして開発、社会実装しています。今回の震災では岩手県釜石市、陸前高田市で自治体職員への研修を実施するとともに、岩手県で「被災者登録システム」が採用される予定です。

海に流出した重油の回収後のバイオ処理活動

 宮城県気仙沼市では津波で石油タンクが破損し重油が海に流出、大規模な火災が発生しました。海への重油の流出量は12810トンで、1997年のタンカー・ナホトカ号座礁による油流出量(約6240トン)の倍以上の量です。
 「研究開発成果実装支援プログラム」の実装責任者・斉藤 雅樹氏(大分県産業科学技術センター 主任研究員、2011年5月大分県庁に異動)は、回収後、従来は焼却によって処理するしかなかった流出油を「バーク堆肥」と呼ばれる有機肥料で分解・バイオ処理する手法を開発・社会実装しています。この技術は従来の焼却処理方法より低コストで環境負荷が少ないのが特徴で、今回、被災地の処理業者に対し気仙沼湾等に流出した油の処理技術を提供するべく準備を進めています。

津波で倒壊した石油タンク(宮城県気仙沼市)

「おげんき発信」を通じて一人暮らしのお年寄りの安否や健康状態を確認

 「コミュニティで創る新しい高齢社会のデザイン」研究開発領域で研究開発活動を行っている、小川晃子氏(岩手県立大学 社会福祉学部 教授・地域連携本部 副本部長)のプロジェクトは、過疎化・高齢化の進展が著しい岩手県において、平常時から一人暮らしの高齢者が電話を使って毎日身体の状況を伝え、それぞれの市町村の社会福祉協議会を通して民生委員などの協力者と連携しながら「みまもり」を続けていくシステムを開発、地域で実装を進めるとともに、さらに高齢者の身体的・心理的異変や買い物・外出などの生活支援に対応できる情報の流れとコミュニティにおける支援体制の研究開発を行っています。
 今回の震災により、実装地域である岩手県宮古市等では大きな被害を被り、情報システムも停止しましたが、平常時から培ってきた人的ネットワークが活かされ、安否確認やその後の生活支援に役立っているとのことです。

被災地・岩手の小川プロジェクトの応援とボランティア活動に参加して

「おげんき発信」を利用している一人暮らしのお年寄りのお宅で。
緑色のプッシュホンで毎日社会福祉協議会に連絡を行っている。
(写真は震災以前に撮影させていただいたものです)