さまざまな研究開発成果(概要紹介)

※所属・役職は研究開発プロジェクト終了当時のものです。

「釜石の奇跡」として実を結んだ、「動くハザードマップ」と防災教育

研究開発・実装責任者:片田 敏孝( 群馬大学大学院 工学研究科 社会環境デザイン工学専攻 教授)
「コミュニティがつなぐ安全・安心な都市・地域の創造」研究開発領域/研究開発成果実装支援プログラム

 予想される津波の被害範囲や程度を、発生からの時間順に地図上で確認できる「動くハザードマップ」を開発。防災啓発活動のため、複数の自治体と連携して防災教育活動に取り組みました。その自治体のひとつが、釜石市です。平成23年の東日本大震災で釜石市も大きな被害を受けましたが、8年間にわたる防災訓練を重ねてきた市内14校の小中学校では、約3,000人のうち99.8%の子どもが生き延びました。「釜石の奇跡」と称された出来事です。

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震災当日、学校から避難する子どもたち。
高学年の生徒が低学年の児童の手を引いている。

震災で、水害・火災で、取りこぼしの無い被災者支援を目指す、「被災者生活再建支援システム」

研究代表者・実装責任者:林 春男( 京都大学 防災研究所 巨大災害研究センター 教授)
「情報と社会」研究開発領域/研究開発成果実装支援プログラム

 RISTEXで開発と実装の一端を担ったこのシステムは、建物被害の程度を正しく認定し罹災証明を公平にスムーズに発行できる仕組みです。さらに、台帳をデジタル化し、市から被災者へ生活支援の申請を働きかけることで、スピーディで取りこぼしのない支援を目指しています。このシステムは、既に東京都特別区12区をはじめ各地で導入されているほか、平成28年度は、熊本県内の15市町村や、糸魚川大火でも活用されました。

※実装活動は平成24年4月より田村圭子氏(新潟大学 危機管理室 教授)に責任者を交代

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平成24年9月に行われた東京都総合防災訓練会場で
の罹災証明発行訓練の様子

被災地の集団移転サポートを通じて、コミュニティ・レジリエンス(回復力)論を実証

研究代表者:石川 幹子( 中央大学 理工学部 人間総合理工学科 教授)
「コミュニティがつなぐ安全・安心な都市・地域の創造」研究開発領域

 東日本大震災で大きな被害を受けた、宮城県岩沼市玉浦地区を含む仙南沖積平野。その集団移転をサポートしつつ、復興の道筋や都市・地域計画の策定に関わる手法を開発・実証。住民ひとりひとりの意見を丁寧に吸い上げながら進められた「いのちを守る沿岸域」の再生への取り組みは、NHKスペシャルで数回にわたり報道され、大きな反響を呼びました。また、日本学術会議へ提出された「提言」は議論を深めて公表され、復興のありかたに大きな影響を与えました。
2017seika_p37_3.png ワークショップ成果としての街づくり計画

バランスの崩れ(重心)を検知し、警告。トレーラーや大型車の横転事故を防ぐ

研究代表者・実装責任者:渡邉 豊( 東京海洋大学 海洋工学部 教授)
「社会システム/社会技術論」研究領域/研究開発成果実装支援プログラム

 海上コンテナを積載したトレーラートラックは、重心の高さや積荷の偏りにより、法定速度で走行していてもカーブで横転事故を起こすことがあります。そこでこの研究では、実際にトレーラーを横転させてみることで、横転のメカニズムを解明。船舶の重心計算の方法を応用(逆関数化)し、トレーラーをたった30秒まっすぐに走らせるだけで横転危険速度が計算できるシステムを完成させました。その後、音声警報機能を追加しドラレコとGPSとも融合。今後は大型車の自動運転に欠かせないシステムとして、国内外で広く社会に普及することが期待されています。

2017seika_p37_4.png トレーラトラック横転限界速度予測システムのジャイロ

発達支援の必要な子どもの早期発見システムを開発、母子手帳に取り入れられる

研究代表者・実装責任者:神尾 陽子( 独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 児童思春期精神保健研究部 部長)
「脳科学と社会」研究開発領域/
研究開発成果実装支援プログラム

 この研究開発では、某自治体の乳幼児健診と連携して5年間にわたるコホート研究を行い、発達支援を必要とする子どもたちを早期に発見・支援するシステム(M-CHAT)を開発し、事業化に成功しました。さらに、支援ニーズのある子どもに最も身近な地域の保健師や小児科医に向けた学習ツールを開発し、普及に努めました。平成24年にはM-CHATの1項目が母子健康手帳の1歳児欄に、平成26-27年には乳幼児健診の保健指導テキストにも採用されました。さらに社会性の早期発達の理解定着の指標として「健やか親子21」第2次計画(平成27~36年度)の重点課題にも活用されています。

2017seika_p38_1.png e-ラーニングを活用した専門家向け学習ツール

手足が不自由でも車を運転できる、ジョイスティック・システム

実装責任者:和田 正義( 東京農工大学大学院 工学研究院 准教授)
研究開発成果実装支援プログラム

 身体障害者用自動車運転装置の開発・製造で40年以上の実績を持つニッシン自動車工業(現:㈱ミクニ ライフ&オート)とともに、手足に力の入りにくい重度障害者でも運転可能な、ジョイスティック式の自動車運転システムを共同開発しました。この研究開発は、平成27年度文部科学大臣表彰の科学技術賞を受賞しています。なお、運転者が改造後の車で運転免許を取得するために、教習所やリハビリテーションセンターの協力のもと、支援体制モデルを実現しました。今後も多くの方にこのシステムを利用してもらえるよう、普及活動を続けていきます。

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ジョイスティック2 本タイプの運転システム。
ハンドル操作に伴うウィンカー、ホーン、ブレーキロックスイッチなどの操作がジョイスティックの周辺で行えるようになっている。

地域にあわせた「楽」で「楽しい」営農スタイルの構築

研究代表者:寺岡 伸吾( 奈良女子大学 文学部人文社会学科 教授)
「コミュニティで創る新しい高齢社会のデザイン」研究開発領域

 柿農業が盛んな奈良県下市町で、高齢者が「楽に、楽しく」長く続けられる農業のあり方を検討し、中山間地域の持続可能性を高めることを目指して研究開発に取り組みました。社会学的に地域の問題を洗い出す「集落点検法」や、身体に負担をかけない柿の農法、高齢者に使いやすい電動農機具の開発、柿農業特有の身体の問題を解消する体操など、様々な視点からの成果を生み出しました。これらの活動は、平成26年度第2回プラチナ大賞優秀賞を受賞。また農業大国トルコへ招待されるなど、国内外で広く注目を集めています。

    プラチナ大賞優秀賞受賞
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    開発した「らくらく電動一輪車」安心・安全で楽しく操作、しかもパワフル

「使いやすさ」を求めて、高齢者・企業・研究者が協働する場「みんラボ」

研究代表者:原田 悦子( 筑波大学 人間系心理学域 教授)
「コミュニティで創る新しい高齢社会のデザイン」研究開発領域

 高齢者の「使いやすさ」をテーマに、高齢者と企業、研究者が対話できる場として、「みんなの使いやすさラボ(通称・みんラボ)」を立ち上げました。ここでは、コーディネーターを通じて企業が持ち込んだモノやサービスについて、高齢者がテストに参加し、議論を行います。高齢者にとっては、モノづくりへの社会貢献や地域交流ができる活躍の場であり、企業や研究者にとっては、高齢者との対話を通じて「使いやすさ」への見識をより深めてゆく場です。みんラボの活動は、IAUD(国際ユニヴァーサルデザイン協議会)の2014アウォード・ソーシャルデザイン部門で金賞を受賞するなど、対外的にも注目を集めています。

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戦略的イノベーション創出推進プログラムで開発中の生活支援ロボット
システム「PaPeRo」の使いやすさを「みんラボ」で検証中

「電話」で高齢者を見守るシステムを開発・普及、小学校の教科書にも掲載

研究代表者:小川 晃子( 岩手県立大学 社会福祉学部 教授)
「コミュニティで創る新しい高齢社会のデザイン」研究開発領域

 一人暮らしのお年寄りが、自宅の電話から支援者へ、気軽に困りごとなどを伝えられるシステムの開発・普及と、それを活用したコミュニティづくりを行いました。支援者は社会福祉協議会や地域の人々と連携して、地域の高齢者を緩やかに見守りながら買い物サポート等の生活支援を行い、緊急時には通報によって駆けつけることができます。岩手県滝沢村(当時)で導入されたほか、東日本大震災の仮設住宅においても活用されました。これらの活動の様子は、平成27年度から小学5年生の社会科の教科書で紹介されています。
2017seika_p38_5.png滝沢村(当時)川前地区の取り組み

 さまざまな地域団体が連携し、一人暮らしのお年寄りを見守るネットワークを構築。