プログラムについて

プログラム総括より


プログラム総括 山縣 然太朗

プログラム総括 山縣 然太朗
山梨大学大学院総合研究部医学域社会医学講座 教授

近年、我が国は、人口減少と少子高齢化、巨額の財政赤字等をはじめとする多くの社会的課題に直面しています。また、今後予想される大きな社会構造の変化は、これまでに我々が経験したことのない新たな社会的課題の登場を予想させます。そうした大きな変化を前に我々の社会がそれに適応していくためには、課題の本質を的確に捉えた研究開発や技術開発を推進し、生み出された知見を着実に政策に結び付けていくことが必要です。

しかしながら、これまでの政策形成においては、必ずしも十分な客観的根拠なしに政策の立案や決定が行われたり、優れた科学的知見が生み出されながらも、それを有効に活用して課題の解決へと応用することができなかったり、あるいは、優れた政策アイディアが存在しながらも、それが社会に受け容れられなかったといったケースが少なからずみられました。こうした状況の背景には、科学技術イノベーションを促す政策をデザインするための明確な方法やアプローチが定まっていなかったことが挙げられます。

こうした問題意識のもと、2011(平成23)年度より文部科学省「科学技術イノベーション政策における『政策のための科学』推進事業」(Science for RE-designing Science, Technology and Innovation Policy, 「SciREX事業」)がスタートしました。本プログラムは、その事業の一翼を担う公募型研究開発プログラムという位置づけのもとに、科学技術イノベーションを促す政策を「客観的根拠(エビデンス)」に基づき科学的方法によって策定するための体系的知見を創出する研究開発を推進することを目的としています。

当プログラムでは、特に以下の点を重視しています。
 第1に、エビデンスに基づく政策形成です。従来の政策形成過程においては、どちらかといえば経験や先例を頼りとした判断が求められてきたように思われます。すでに相当程度成熟しているわが国の制度や組織をさらに合理的かつ効果的に運用・運用していくためには、しっかりとした客観的根拠(エビデンス)に基づく検討を行うことが何より大切です。

第2に、研究と政策の架橋です。生み出された優れた知見を実際の政策に活用、導入していくためには、研究開発と政策形成の橋渡しを担う「人材」の存在が重要となります。得られた科学的知見をもとに、それを政策に応用することの意義を説得力を持って主張し、政策担当者をはじめとするステークホルダーの理解を得ていくことのできるマネジメント人材の育成が同時に求められます。

このように、政策の改善に具体的に貢献しうるような知見や手法の開発とともに、そうした研究開発と政策形成の橋渡しを担う人材の育成をセットとしている点こそ、この「科学技術イノベーション政策ための科学 研究開発プログラム」の特徴であると考えます。

EBPM(Evidence-Based Policy Making, 証拠に基づく政策立案)に対する関心が高まりをみせる今日、「科学技術イノベーション政策における『政策のための科学』」としてこうした期待にどのようにして応えていくかが大きな挑戦といえます。積極的なご意見と共に、本プログラムに貢献する優れたアイディアをもとにしたプロジェクトが提案されることを期待しています。

プロフィール

1986年山梨医科大学卒業、1991年文部省在外研究員(米国カリフォルニア大学アーバイン校小児科人類遺伝学教室)、1999年山梨医科大学・教授(2002年から山梨大学医学部。2004年から社会医学講座(講座名変更))、山梨大学保健管理センター長(併任 2007年~2012年)、山梨大学大学院附属出生コホート研究センター長。早稲田大学客員教授(2009年~)、東京医科歯科大学非常勤講師(2006年~2016年)など。専門分野は公衆衛生学、疫学、人類遺伝学。30年にわたる妊娠期からの母子保健縦断調査(出生コホート研究)を地域と連携して行っている。2006年から09年までJST・RISTEXの「脳科学と社会」領域で「日本における子どもの認知・行動発達に影響を与える要因の解明」の研究統括を担った。現在は環境省のエコチル調査(甲信ユニットセンターセンター長、戦略広報委員長他)を中心に母子保健領域の研究を中心に行っている。ゲノム科学や脳科学など先端科学と社会との接点も研究テーマ。日本公衆衛生学会理事、山梨県社会福祉審議会委員長。厚生労働省「健やか親子21推進検討会」委員(中間評価研究会座長)、「健康日本21(第2次)推進専門委員会」委員、「データヘルス時代の母子保健情報の利活用に関する検討会」座長、文部科学省「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の見直しに関する専門委員会」「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針検討委員会」委員ほか。遺伝医療はライフワーク、「研究は住民にはじまり住民に終わる」がモットー。

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